319.【後日談】健康診断
「ネル、あなたは猫さんを運んでね。
私はサバさんを運ぶわ」
「はーい」
俺はネルに抱きかかえられる。
あったかい。
ネルの肩をぎゅっと掴む。
「ネル姉さん、重くないですか?
私が代わりますよ」
「大丈夫だよー」
病院に運ばれつつ俺は思う。
キャリーバックも無料配布すべきだな、と。
◇ ◇ ◇ ◇
魔獣都市マタタビ東地区病院。
人間の医者、魔獣の医者両方が居るので、どちらが病気しても、ここに来れば治してくれる。
治療費や診断費用は全額都市が負担してくれる。
なので今回の健康診断も、ナンシーさん達の懐は痛まない。
「猫さん、猫さん」
ナンシーさんが受付で並んでいるのを見ていたら、ヨツバが耳打ちしてきた。
「健康診断、ぶっちゃけ要ります?
病気になったら【ヒール】で十分なのでは?」
「にゃー(駄目だ)」
俺は首を振り、
『【ヒール】を頻繁に使用すると、体や病気が【ヒール】に対して耐性を持つようになる。
そもそも【ヒール】が効かない病気もある。
早いうちに見つけないと、手遅れになる病気もある』と刻む。
俺みたいに理屈が分かって使う分にはあまり問題にならないが、中途半端に【ヒール】連打するのが一番困る。
【ヒール】が効かなくなり、手遅れになってやって来る奴も、昔はたくさんいた。
その反省から、この魔獣都市マタタビでは、【ヒール】使用は資格制にしている。
で、病院には選りすぐりの【ヒール】使いが揃っていて、もちろん基本的には【ヒール】無しで対処する体制をとっている。
「ネル、あちらですぐに診てもらえるみたいよ」
「猫さん、行こーか!」
「にゃー」
ちなみに、【鑑定】スキルは信用していない。
あれはあくまで鑑定神の見立てであり、予想に過ぎないのだ。
一般人が使う分には全く問題ないのだが。
あのスキルに頼り切りだと、新しい発見が無くなるどころか、自分の頭で考える力が無くなる。
俺は最近、よほど自信が無い場合と、確認のための裏付け程度にしか使用していない。
魔獣都市マタタビくらいではないだろうか。
【鑑定】スキルを重視せずに治療を行っている都市なんてのは。
健診結果。
俺達はいたって健康ということだった。
俺とヨツバ以外の2人+1匹は、魔石式体内画像描出装置と、転移式血液採取装置に驚いていた。
ヨツバは、ネコ科魔獣の医者が行っている聴診と嗅診に感激していた。
聴覚と嗅覚に優れたネコ科魔獣が行わない理由が無いからな。
ただまあ、医者が俺を必要以上に嗅いでいたのは明らかに職権乱用だろう。
後で病院に文句言ってやる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます