318.【後日談】面倒くさい奴
夜の中央広場にて。
いつも通り魔獣幹部5体は、会合を開いていた。
周りに野次馬が居るのも、いつも通りである。
人間大の茶トラ白の魔獣、火車が仕切る。
彼は幹部のリーダーなのだ。
「んなお(さて、そろそろ首都チザンへ行く時期になりました。
今回の当番は私です。
いつも通り、奴隷とゴーレム達が収穫した作物の納税、定例報告ですな。
他に何か要件があれば承りましょう)」
羽が生えたサバ白の巨大魔獣、キメラがヨダレを垂らして吠える。
「ガゥ!(向こうのお肉を、お土産にたくさん!)」
続いて、緑色の不健康そうな肌をしたゾンビキャットが、火車に買い物リストを渡す。
「アァー……ヤ……ク……ソ……ウ……」
「んんー? この買い物リスト、ゾンビキャット。
あんた普段こんなに頼まないのに、珍しいねぇ」
今はサビ猫の姿をしている、人間語を喋る化け猫。
彼女が、買い物リストをのぞき見しながら言った。
「ト……モ……ダ……チ……」
「友達? あぁ、コーディって名前の人間のことかい。
彼女のために買ってきて欲しいってわけだねぇ?」
「ウ……ン……」
「なん(他に買い物を頼みたい者は居ますかな?)」
「にゃー(シャムの両親が、もっと良いパン酵母を欲しがっていた。
都市で何種類か買ってきてくれ)」
「なお!(肉球魔王様の頼みとあらば、この命に代えても
たかがお使いを頼んだ程度で、大げさすぎるだろ。
首都チザンも、取引は物々交換がメインだ。
なので交換用に、ダンジョン産のドラゴン肉を火車に渡す。
諸々の経費込みで、100kgもあれば足りるだろう。
「ガオ!(おいしそう!)」
「ふしゃー!(これは肉球魔王様が託した経費!
食用ではありませぬ!)」
火車は、ささっと四次元空間内に肉を仕舞った。
「にゃー(欲しいなら、食ってもいいぞ)」
火車に渡したのとは別にドラゴン肉を取り出す。
800kgくらいあればいいか。
火車以外の魔獣幹部達、野次馬の魔獣も集まり、肉に食らいつく。
火車が羨ましそうに見ている。
「にゃー(お前は食わないのか?)」
「なー!(男は前言を撤回したりしませぬ!)」
やれやれ。
頑固というか真面目というか。
「にゃー(いいから食べておけ。これは命令だ)」
「なん!(命令とあらば仕方ないですな!)」
火車は軽快なステップで、肉へと向かった。
面倒くさい奴。
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