313.【後日談】サバさんとナンシーさん
長老猫のサバさんが宿屋に来てから数時間後。
ナンシーさんが長老猫をモフっていたところ、コンコンと扉を叩く音がした。
「お届け物でーす」
「あら? 何かしら。
ネル、見てきてくれる?」
「はーい」
ネルが扉を開け、男の人が木箱を渡す。
ああ、例のアレか。
「ママー、何だか色んな物が入ってるっぽいよー。
よっこいしょ」
木箱を床に降ろし、蓋を開けて中を覗き込む。
「手紙が入っているわね。
『小型魔獣世話セットの内容は以下の通りになります。
小型魔獣用のトイレ猫砂2セット
ひと月分のエサ入り袋1つ
手作り猫じゃらし10本
毛づくろい用の櫛1つ
小型ベッド
他にも……』
こんなもの注文してないわ。どうしましょう」
「これって、都市で無料配布されているお世話セットだよね」
「本当? あら、手紙の最後の方に書いてあるわね。
そういう大事なことは、手紙の最初に書くべきだわ。
そもそも、手紙が読めない人が受け取った場合どうするつもりだったのかしら」
むむ、ナンシーさんの指摘はもっともだ。
世話魔獣やお世話セットの引き渡しは、まだ改善の余地があるな。
今度、魔獣幹部たちに伝えるとしよう。
「まあいいわ。さっそく使いましょう。
猫砂トイレ?を設置して……何で2つもあるのかしら」
気が向いた場所でトイレが出来るように、多めに用意してあるのだ。
「これは……紙袋?
穴が開いているわね。不良品かしら」
ナンシーさんがそばにどけた紙袋に、さっそくサバさんが入った。
ガサゴソ、ガサゴソ。
「あら、そうやって使うのね。なるほど。
で、こっちの本は『ネコ科魔獣お世話マニュアル』と書いてあるわ。
タダで本をくれるなんて、太っ腹ね」
ぽすっ、ぽすっ。
紙袋の穴からサバさんが前足を出し、ナンシーさんに猫パンチしている。
「みゃあ(ネズミ穴を探っている気分で、楽しいです!)」
「構ってほしいのかしら。手作り猫じゃらしで遊ぶ?」
ちょい、ちょい。
ナンシーさんが猫じゃらしを、袋の穴の前でヒラヒラと動かす。
穴から前足が出て、猫じゃらしを掴もうとする。
出ているのは前足1本だけなので、掴むのは難しいだろうな。
ナンシーさんは片手で適当に猫じゃらしを振りながら、木箱の中身を一通り確認した。
サバさんは遊んで満足したのか、袋の中で眠ってしまった。
「人懐っこい子で良かったわ。これからもよろしくね」
ナンシーさんは飲み水の容器に水を満たして、サバさんの方に向かってウインクした後、宿屋のカウンターに向かった。
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