296.【後日談】魔獣都市マタタビ
都市は石造りの高い壁に覆われている。
4方に門があり、俺達は森のある方角から、西門から入ることにした。
「ガルル……止まれ。何者だ」
槍を持つ門番2人が通せんぼした。
門番は二本足のキリリとしたネコ科の魔獣、ワータイガーだった。
筋肉質の虎の魔獣が、ふんす、ふんすと荒い息をあげている。
「猫の兵隊さんだー! かっこいいね!」
「ネル姉さん、危険です。あまり近づいてはいけません」
駆け寄るネルを、ヨツバが止める。
そして、門番の前に俺は出る。
「にゃー(ああ、俺だよ、俺)」
「ガルル……こ、これは肉球魔王様!
どうぞ、お通りくださいませ!」
ネコ科魔獣は、猫語が通じるからいいな。
翻訳って面倒なんだよなぁ。
「猫さん、肉球魔王というのは?」
『書類の印を全部肉球スタンプで済ませていたら、勝手にそう呼ばれるようになった』と刻む。
「それはいいのじゃが、アレは何のつもりじゃ?」
シルフ婆さんが門番2人を指さす。
彼らはお腹を見せて寝転がっている。
一応、最敬礼のつもりらしい。
「わ~、モフらせてもらいましょ~」
「グルル……貴様何をする! あっ、そこはダメです?!
ぬおおお……!」
アウレネは、門番の1人の腹をモフモフしていた。
度胸あるなオイ。
「ゴロゴロゴロゴロ……」
「ガルル……あのベンジャーが一瞬で堕ちただと?!
なんというモフテク……」
もう1人の門番は起き上がり、仲間の様子を見て驚いている。
いや、止(と)めろよ。
何を羨ましそうに見ているんだ。
俺はアウレネを引っ張る。
いい加減、都市に入るぞ。
◇ ◇ ◇ ◇
俺達は道の途中で立ち止まり、周りを見る。
魔獣都市マタタビ。
人口約20万人の、この世界では比較的巨大都市。
西ゴーシュ国時代から存続する数少ない都市の1つであり、魔獣国で最も栄えている都市の1つでもある。
町を我が物顔で歩く魔獣の多くはネコ科魔獣だ。
彼らの世話を、奴隷の人間が行う。
例えば、魔獣を乗せた荷車を引いている。
他にも、魔獣のえさやり、飲み水汲み、トイレの世話まで行っているらしい。
たまに魔獣相手におもちゃで遊ばされている。
あとは毛づくろい、爪切り、病気の魔獣の世話とかだな。
それ以外は特に人間に制約は無く、魔獣国の中でもここは緩い方らしい。
「みゅ~(臭いの、臭いの、とんでけにゃ~!)」
リリーは、アウレネの足に体をゴシゴシこすりつけている。
先ほどの門番の香りがアウレネに残っているのが気に入らないらしい。
「リリーちゃんは甘えんぼです~、よいしょ」
リリーを抱っこするアウレネ。
俺達は再び歩き出す。
「で、どこに向かっているのですか?」
エメラルド版を歩きながら取り出し、浮かべる。
『まずは宿屋跡地、次に雑貨屋跡地、それでひとまず解散だ』と文字を刻んだ。
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