297.【後日談】宿屋、雑貨屋復活


しばらく歩くと、宿屋跡地に着いた。

跡地は土がむき出しで、何もない場所だ。

ネコ科魔獣が数匹、のんびり体を伸ばしてくつろいでいる。



「猫さん、ここが宿屋があった場所なのですか?」


「周りの景色が、私の知ってるのと全然ちがーう」


「1000年の時を経たというだけあり、跡形も無いようだ」



宿屋に住んでいたヨツバ、ネル、スペンサー君が言う通り、言われなきゃ跡地だとわからない場所だ。



「それでバステト様。

単にワシらに空き地を見せたかったわけではないのじゃろ?」


「にゃー(それっ)」



四次元空間から、宿屋を取り出した。

ネルの子孫が取り壊そうとしたので、俺が回収したのだ。

ネコ科魔獣達が慌てだす。



「なーん(うわぁぁあ?! 何か出たー!)」


「みゃおおん(潰されるー?!)」


「にゃ(撤退ー!)」



魔獣が跡地から退(ど)いたのを確認し、持ち上げている宿屋をゆっくりと跡地に降ろす。



「ママの宿屋だー!」


「修繕の跡が見られますね」


「800年前に、ワイのとこの大工ギルドで直してやったで。

まさか今こうして出されるとは思わなんだわ」



チャールズ君のところの大工ギルドに補強してもらったので、そっとやちょっとじゃ壊れないはず。

錬金術でしっかりと地面に固定して、っと。



『ナンシーさん達、一般人はここに泊まってもらうとしよう』と文字を刻む。


「ママは今居ないよー?」


『また後で蘇生して連れてくる』と刻む。



3日後に命君のダンジョンに行く予定だ。

その時に蘇生を行い、シルフ婆さんに一芝居頼むことにする。



「この様子だと、雑貨屋クローバーも猫さんが保管しているのかな?」


『ああ』と刻む。



さて、次は雑貨屋を取り出すために、雑貨屋跡地へ向かうとしよう。



◇ ◇ ◇ ◇



雑貨屋跡地にもネコ科魔獣が転がっていたので、オリバー君と一緒にどかすことにした。

どかした場所に、少しずつ建物を取り出し設置する。



「びぃぇぇえええ!(やだー! この場所を取らないでー!)」


「みゃおおおお!(ぼくたちのお昼寝スポットがー!)」


「なーん、なーん(うぇぇえええん! 酷いよぉ!)」



この土地は俺の物だ、とあらかじめ公言してあるのだが、全員が知っているわけではなかったようだ。

勝手にここで昼寝していた子ども魔獣達が俺を批難する。



「ふむ、デブ猫よ、この魔獣達は何と言っているのだッ?」


「何だか、怒っているような、泣いているような感じです~」



俺やオリバー君を小さな前足でぽこぽこ殴ってくるが、そんな攻撃が通用するわけがなく。

後から親の魔獣がやってきて、俺に謝り、子どもを咥えて去っていった。


うーむ、なんだか罪悪感が残るな。



「にゃー(今度、都市を東の方に拡張して、公共の昼寝場所を増やしてやるよ)」



子ども魔獣達が去った後、独り言をつぶやく。


そして建物を全て取り出し、雑貨屋クローバーが完成する。



『よし、中に入るぞ。

解散する前に、この都市のルールを説明しておくからな』と刻む。



俺達は雑貨屋の生活スペースに移動した。

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