267.【過去編】リリー怒られる


□前書き□


異世界に来て6年目のある日。



□□□□□□□□□□□




「みゅ~(いい匂いがするにゃ! いただきまーすにゃ!)」


「こ~ら~! リリーちゃん、服をカミカミしちゃ駄目です~!」



いつもポケーっとしているアウレネが、珍しく怒っていた。

その横で、シルフ婆さんがガックリしている。



「儂の服まで穴だらけじゃ……せっかく編んだのに」



どうやら、リリーが色々な洋服を噛んで穴だらけにしているらしい。

最初は可愛いと言っていたエルフ達も、無視できない被害になってきたのでアウレネに止めさせるよう言っている。



「みゅ~(皆どうしたにゃ? 怒ってるにゃ?)」


「にゃー(そりゃな)」



俺はリリーに、服というのは人間にとって、自分達の毛皮に相当すること。

それは作るのに手間がかかるし、直すのも面倒なこと。

噛まれたら使い物にならなくなることを伝えた。



「みゅ~(人間って変なんだにゃー)」


「にゃー(だから、服への噛みつき禁止な)」


「みゅ~(分かったにゃ)」



言いつつリリーは、座って裁縫しているシルフ婆さんに後ろから近付く。



「みゅ~(とーうだにゃ!)」


「ぐほっ?!」



ああー?! シルフ婆さんの背中に飛び乗りやがった!

何て事を!



「みゅ~(高い高ーいにゃ!)」


「これ! いい加減にせんか、このイタズラ猫!」


「もー、リリーちゃ~ん!」



アウレネがリリーを抱きかかえ、俺はシルフ婆さんの背中に【ヒール】をかける。



「みゅ~(アウレネの抱っこ、温かいにゃー)」


「リリーにゃん、背中乗ったら駄目です~!」


「みゅ~(えー、また怒られたにゃ、人間は気難しいのにゃ)」



俺と違って、リリーはエルフ達の言葉が分からない。

だが本人は困っていないので、覚える気は無いようだ。

困っているのは周りの連中なのだがな。



「にゃー(シルフ婆さんの背中に乗ったら、骨折するかもしれないから乗るなよ?)」


「みゅ~(シルフ婆さんって何にゃ?)」



まずはここに居る奴らの名前を教えるか。

あとはここで暮らすマナーだな。


先輩猫として、厳しく指導しなければな。


指導の甲斐もあり1年後には比較的マシなリリーになった。

相変わらず強い奴に喧嘩を挑むのは変わっていないけどな。

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