251.金眼夜叉 その3


俺がかまどで料理していると、白い野良猫がやってきた。

金眼夜叉と呼ばれている猫だ。



「みゅ~(何にゃそれ)」


「にゃー(ネズミもどきを煮ているんだ)」


「みゅ~(猫が料理? 変にゃの)」



料理といってもただのお湯で煮込んでいるだけだが。


よし、そろそろ引き揚げるか。お湯を捨てて、っと。

これでネズミもどきのエーテルは抜けたみたいだ。


ネズミもどきを水に浸けて冷ます。

冷えたので引き揚げ、水を切ってから野良猫君に差し出す。



「みゅ~(おいらは生の方がすきにゃんだけど、まーいっか。

いただきますにゃ)」



俺も食べるとしよう。いただきまーす。


もぐもぐ。ふむ、生臭くないぞ。

実験用に、餌を新鮮な物にしたのが良かったのだろうか。


二匹で仲良く夕食を食っていると、アウレネがやってきた。



「にゃんこさ~ん。その子の名前、決めましたよ~」



名前?

飼うつもりなのか?



「リリーちゃんです~。

おしとやかな女の子さんなので、可愛い名前にしたですよ~」



おしとやか?



「みゅ~(おっ! 強そうなガーゴイルだにゃ!

勝負にゃー!)」


「キュオオオオン!(む?! 何をするである!)」



フランベルジュに飛びかかるリリー。

噛みつき攻撃で、フランベルジュの右腕がもげる。


そして猫キックで追撃する。

全然おしとやかじゃないぞ。



「みゅ~(何こいつ、見た目に反して弱いにゃ)」


「キュオオオオン!(ああ!

せっかく復活のために溜めてきた魔獣エネルギーが放出されたのである!

また溜め直しである、はぁ……)」



リリーは興味を失ったのか、フランベルジュから離れた。

フランベルジュは、本来の竜の姿に戻る日がまた遠ざかったそうな。

哀れ。【ヒール】をかけておいてやろう。



「リリーちゃん、こっちです~」



アウレネは、竹とひもで作った特製おもちゃをフリフリしていた。



「みゅ~(遊んでくれるのにゃ? わーい)」



それからというもの、アウレネとリリーは仲良しになった。

餌をやったり、毛づくろいしたり、なでなでしたり、一緒に寝るようになったらしい。


なお、アウレネもリリーも、互いの言葉は分からない。

長老猫と違って、リリーは猫以外の言葉に興味が無かったから。


だが最近は、『ごはん』と『リリー』という言葉を覚えたらしい。

いつかアウレネの言っていることが理解できるようになるかもな。

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