209.メガネが似合いそう


・ヨツバ視点


奴隷商館に訪れた。

この世界には小さな身長の種族も居るため、私みたいな小さい者だってお客になれる。


うさんくさいオッサンが地下の牢へ連れて行ってくれた。

そして、奴隷を並べる。



「お客様、こちらの商品はいかがでしょう?

丁度先ほど城から入荷した、ルカタ帝国の元要人だそうです。

値は張りますが、その分優秀な働きを見せるでしょう」



戦争奴隷ってやつだね。

……若い男が居ない!

論外だよ!



「うーん、年寄りばっかりで要らないかなぁ。

イケメンは居ない?」


「はぁ、そういう者はすぐに貴婦人に売れますので今はいません」


「そっかぁ」



オッサンと話しつつ、てくてく歩きながら並んだ奴隷を物色する。



「お! 居るじゃんイケメン!」



長身で、金色の短髪の18歳くらいの男だ。

メガネが似合いそう!

名前プレートによると、彼の名前はスペンサー君。



「その者は、金に困った下級貴族が売り飛ばした者です。

パンを食べると発疹が現れたり調子が悪くなるという、原因不明の病気を持っています。

なので食事の世話がとても面倒で面倒で……。何度も返品されて困っているのです。

今ならお安く致しますが、どうされます?」



パンを食べると発疹……小麦アレルギーかな?

猫さんに相談すればいいや。



「うん。見積もりよろしく」


「では、1200万Gでどうでしょう」


「定価の1000万Gより高くするんだー、へぇ……舐めてるの?」



軽く【フリーズ】で威圧。

部屋の温度を7度ほど下げた。



「じ、冗談ですよ。440万G」


「ま、妥当かな」



現金を払い、契約スキルを使ってもらった。

契約内容は、購入者に逆らわない、犯罪をしない、という基本事項2つに、私の正体は秘密、を加えた。

追加料金は60万Gで計500万Gだった。

これで彼は私の奴隷だ。



「毎度ありがとうございます。

気にいらなければまたお売りください」



私達は奴隷商館を出る。



◇ ◇ ◇ ◇



・スペンサー視点



「私はヨツバだよ。よろしくね、スペンサー」



今度の主は小さな者だ。

ドワーフ……いや、さらに小さなホビット族か。



「主よ、吾輩は奴隷とはいえ貴族。

貧相な生活をさせるのなら、それなりの対応をさせてもらおう」


「挨拶をされたら返すのが礼儀でしょ?」


「そうか? どうせ、すぐに手放されることになる。

吾輩の謎の病気は、パンだけでなく他の食材でも引き起こされることがある。

食事の世話や医者の手配を面倒がって、吾輩を手放した元主は6人居る」



吾輩は、手放した貴族の顔を思い浮かべる。

奴隷をうっかり殺したら、その主は重罪で罰せられる。

なので、普段の食事で時に死にそうになる吾輩のことを彼らは疎ましく思うのだろう。


親が吾輩を売ったのも、決して金に貧窮したからというだけではあるまい。



「病気の治療に心当たりがあるから、猫さんの所に行こうか。

夜中だけど、まあいっか。猫って夜行性だし」



……何?


どういうことだ、と聞こうとしたら、主のヨツバが不思議なスキルを使い、視界が暗転した。

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