210.自宅の騒ぎ
森の自宅にて。
俺とコーディは、【ヒール】談義に花を咲かせていた。
「つまり……【ヒール】は複合スキル……。
……回復スキル【解毒】【再生】【自殺誘発】……錬金スキル【変性錬成】【分離錬成】の特徴……持っている」
タイプライターで『【ヒール】の効能が、使用者の知識によって変化するのは何故だろう?』と打つ。
「それは簡単……複合スキルは……使用目的を絞らないと駄目……。
つまり……的外れな使用は……無駄……中途半端にしか作用しない……」
なるほどなぁ。
シルフ婆さんの【グレイターヒール】で治せなかった病気を、俺の【ヒール】で治せたのはそういうことか。
【ヒール】は治す病変に対して、どのように治すかを決めないと効果が減少するということだな。
ふむふむ。
では、四次元空間内部でHPを回復するのにヒールが使用出来るのはどうしてだろうか。
【再生】というスキルの効能だろうか。
うーむ。
グゥオン!
黒い裂け目が現れ、ヨツバと青年がそこから出てきた。
何でヨツバはローブと仮面を被っているのだろう?
「猫さん、こんにちは」
「にゃー(こんばんはの時間だ)」
『その青年は誰だ?』と打つ。
「私の奴隷のスペンサー君です。小麦アレルギー疑いなので、治療をお願いします。
費用はいくらくらいかかりますか?」
いきなりそんなこと言われても困るぞ。
というか、俺の家に無断で入ってくると、うるさい連中が居るのだが。
ドドドドドド……。
「バステト様?! 侵入者でしょうか?!」
「お~、怪しい者です~。捕えましょ~」
アウレネ達エルフが俺の家に入って来て、ヨツバと青年に武器を向ける。
エルフは俺並に耳が良いので、野生動物顔負けの気配探知能力を持つ。
俺の家に怪しい者が来たということを聞きつけたのだろう。
「待てッ! ヨツバではないかッ!
皆の者、構えを解くのだッ!」
オリバー君が駆けつけて来て叫び、エルフ達は武器を下ろす。
「……エルフの皆さま、お騒がせしました。
以前お世話になったヨツバです」
ヨツバがローブを脱ぎ、仮面を外す。
エルフの中でヨツバを知っている者が、おっ、と声をあげる。
「お~、いつぞやの赤ん坊さんじゃないですか~」
アウレネがヨツバをだっこしようとしたが、ヨツバはオリバー君に飛び付いた。
「ふむ、ヨツバ、この者は誰だッ」
「私が購入した奴隷です。名前はスペンサーといいまして……」
ワイワイガヤガヤと騒がしい。
せっかく徹夜でコーディと【ヒール】談義をしようとしていたのに、邪魔するんじゃない。
「にゃー!(出ていけお前らー!)」
「うわ~ん、赤ん坊に拒絶されました~!
にゃんこさん、なぐさめてください~!」
「アウレネや、いったい何の騒ぎじゃ?!」
「……うっ、たくさんの人……オエッ……」
「ちょっと猫さん! この女性吐いてます!」
俺の家が静かになったのは1時間後だった。
コーディはエルフの群れに酔ったため、傍のテントで寝かせた。
そして、残りの連中には家から出て行ってもらった。
静かになった自宅で、俺は木箱に入り寝ることにした。
おやすみなさい。
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