203.ツンデレリオン君


夕食前の雑貨屋クローバー、店の奥の生活スペースにて。


俺がマック君に料理指導しようとすると、リオン君に止められた。



「旦那、先に俺の夕食を作っていいか?」


「ボクが君の分も作ってあげるよ?」


「ハッ、冗談じゃねーよ」



テキパキと薪を用意し、着火剤に火打石で着火する。



「魔道具は使わないのかい?」


「着火用魔道具は1万Gで50回程度しか使えない。

火おこし程度に、そんな無駄遣いするもんか」



リオン君はスープを作っている。

時々薪の位置を変えたりして、火加減を調整している。

俺はかまどの近くで横になっている。ぬくぬくだぜ。



「スープなんだね」


「安くて腹が膨れるからな」


「ボクはキラーボアのステーキを作ることにするよ」


「鉄板、焦がすなよ?」



リオン君は自分の料理が済み、スープを持ってテーブルに着いた。



「オリバー、出来たぞー」


「うむ」



外で他の大工エルフ達と雑談していたオリバーを呼び、二人は食べ始める。



「何で火を消したんだい、次にボクが料理の練習するのに」


「火おこしくらい自分でやれよ、練習なら」



マック君は薪を敷き、火打石を使うが一向に火がつかない。



「着火剤は棚の2段目にあるから使えよ」



見かねたリオン君がアドバイス。

着火剤を取り出し、火をつけようとするが、10分ほど経過しても一向につかない。



「うーん……難しい」


タイプライターで『打ち方の角度が悪いんじゃないのか?』と打つ。


「それっ、あ、ついた! ついたよ!」



素人だから火おこしに時間がかかるな。



「よーし、こっから先は出来るはず。

まずはこのキラーボアの肉を鉄板に」


「油を先に敷けよ! 焦げ付くだろ!

それに肉に切れ込み入れてねーし!

ああもう見てらんねぇ!」



痺れを切らしたリオン君が、マック君にテキパキ指導し始めた。

俺は喋れないので、指導はリオン君の方が良いな。


肉だけじゃ栄養が偏るので、俺は野菜を渡したが、マック君はきょとんとしていた。

リオン君がため息をつき、野菜炒め作りを指導する。



「ヘラを止めるんじゃねーよ! 野菜が焦げる!」



奮闘の末、何とか人に食べて貰えるくらいの出来のキラーボアステーキと野菜炒めが完成した。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る