204.マック君宿を去る


あの後、マック君とともにスープ、煮物作りも行った。


スープくらい簡単だろうと思ったが、火加減が強すぎて噴き出してきた時は焦った。

俺が今まで上手く火を扱えていたのは【鍛冶】スキルのおかげだったのだと分かった。


特訓の甲斐もあり、マック君はかなり自信が付いたようで良かった。


翌日、マック君は帰ることにしたようだ。



「パーシー君とお婆様に良いとこ見せてくるよ!」



憑き物が落ちたようなすっきりとした顔をして、マック君は宿を去った。



◇ ◇ ◇ ◇



「猫さんはどう思います?

ニコと姑が仲直りするでしょうか?」


ヨツバに問われたので『知らん』と書いた板を取り出す。

というか、あの人はパーシー君の祖母なので、正しくは姑ではないはず?

面倒なので、わざわざ指摘したりはしないが。



「ヨツバー、ネルー、おやつ買ってきたわよー。

今日は大奮発しちゃった、ふふ」



ナンシーさんが買い物から帰ってきた。

何を買ってきたのだろうかと思ったが、雑貨屋クローバーのシュークリームだった。

ワクワクしていたヨツバの顔が曇った。



「わーい、ママ太っ腹ー!」



ネルはめったに食べられない限定スィーツを素直に喜んだ。

ヨツバは試食で食べ飽きている。



「……ありがとうございます」


「これ、おいしーよ! 猫さんのお店のだよね!」


「そうね。葉っぱを咥えている猫の看板があるお店ね。

……変な紋章ね」



貴族絡みの印だと紋章で合っているけど、これは単なるロゴなのだが。

他の店だと、販売許可した貴族の紋章が飾ってあったりするな。

おそらく、店に箔が付くのだろう。


ネルとナンシーさんは美味しそうにシュークリームを食べる。

ヨツバは、他の物が良かったと顔に書いてあるが、黙々と食べていた。



◇ ◇ ◇ ◇



・マック君視点



家に帰って早々、ボクはテレサお婆様から料理の指導を受けていた。



「違う! それは塩!

砂糖はこっちじゃ!」


「す、すみませ……」


「謝る暇があったら手を動かす!」


「はいー!」



ヨツバちゃんやリオン君の指導は厳しいと思ったけど、それの比じゃないくらいお婆様は厳しいというか怖い。


結局、ボクは家事を、お婆様と交代で行うことになった。

誰かと一緒に生きるというのは大変なのだなと改めて感じた。

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