176.結婚式3


王の間には、フランベル国各地に居る貴族が集まっていた。

お、バロム子爵も居るぞ。

こちらに気づいていないようだが。


一般人は兵士と、ネル達、パーシー君の婆さんだけか。

その兵士にしても、貴族は自分の護衛を連れてきているため、ほとんどの城の兵士は主に城の周りの警備をしているらしい。


来る途中、物陰に潜んでいたいかにも悪そうな奴が3人ほど居た。

なので、こっそり近付き猫タッチで不整脈を起こし気絶させた。

いずれも、すぐに兵士が飛んで来て縛りあげた。

やっぱこの城、ザル警備じゃね?



「陛下! 賊は、貴族の誘拐を企んでいた者のようでした!」


「ご苦労。牢へ閉じ込めておけ」


「はっ!」



今日はマック君とパーシー君の晴れ舞台だ。

誰にも邪魔させないぞ。



◇ ◇ ◇ ◇



王様の祝辞、神官のありがたいお言葉、貴族たちからの賛辞の後、広間にて食事会となった。


肉、魚、サラダにデザート……色々な料理があるが、どれも塩がキツいか、味が濃いため俺の口には合わなかった。

なので、部屋の端でバッタの丸焼きをかじっている。

別に寂しくなんかないやい。


バッタを咀嚼しつつ、遠くから皆を観察中だ。

ネルやナンシーさん達は美味しそうに料理を食べたり、楽しそうに貴族の人達と話をしている。

ヨツバは離乳食を卒業していたらしく、必死に料理を食べている。

おいヨツバ、今、四次元空間で料理を仕舞っただろ、バイキングで容器にこっそりおかずを詰めるおばちゃんかよ。



「ああ、猫さんここに居た」



ん?

マック君じゃないか。

白いドレス姿は似合っているが、貴族のそれと比べるとやはり見劣りしてしまうな。


タイプライターを取り出し、『今日の主役がこんな端っこに来てどうした?』と打つ。



「ちょっと疲れたから休憩だね。

あと、今のうちにあらためて挨拶」



挨拶?



「今までありがとう。

ボクは追われていて森に逃げた時、何日も食べてなくて苦しかった。

もういっそ死んだ方が楽になるんじゃないかって思ってたんだ。

でも、ウッドハウスを見て、ひょっとしたら助かるかもって声をかけた。

そして猫さんに出会った」



そういえば、そんな感じの初対面だったっけか。

もう5年前くらいになるのか。

すっかり忘れていたな。



「それからこの国にお世話になって、仕事を見つけて、ネルちゃんたちと出会って、もう一度猫さんを見つけて。

錬金術研究や猫さんによる家庭教師、ヨツバちゃんが産まれて、パーシーにも出会った。

色んなことがあった。あの日猫さんに助けられなかったら、全部、無かったかもしれないんだ。

今のボクは、とっても幸せだよ」


『大げさだなぁ』と打つ。


「ボクは宿を離れることになるけど、ボクのことを忘れないで欲しい」


『ん? ナンシーさんの宿を引き揚げるのか?』と打つ。


「うん。もうナンシーさんやネルちゃんには話をつけている。

パーシー君の家に世話になることにするよ」


『そうか』と打つ。



この世界では、夫婦は別居せず一緒に住むことになっている。

マック君は、パーシー君の家の厄介になることに決めたのだろう。


何だか、娘の巣立ちを見送る父親の気分だ。

これからは、めったに会うことは無くなるのだろう。

すごく寂しいぞ。


マック君に、結婚の祝儀として1億G渡すことにした。

いらないと言われたが、俺のお祝いの気持ちだと伝えると受け取って貰えた。


結婚式はつつがなく終了し、その日のうちにマック君は引っ越してしまった。

ヨツバは、クローバーまで連れて行ってくれる便利な運び屋がぁ~、と嘆いていた。

その後、ヨツバには軽く説教しておいた。

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