166.四次元ワープ


・ネル視点



ママの様子を見て何かしていたヨツバが倒れちゃった!



「けほっ、けほっ!」


「ママ! ヨツバが倒れちゃったよ!」


「はぁ……はぁ……ネル、お医者様を……」



ママは苦しそうだ。

風邪かと思ったけど、深刻な病気に違いない。


こんな時に限ってニコは兵士さんとお出かけしているし、猫さんも居ない。


私がしっかりしなきゃ!


ヨツバをベッドに寝かせる。

スヤスヤ寝ているから、大丈夫そう。

問題はママだ。



「ナンシー! 良い野菜が手に入ったさね!

分けてあげるから……って、どうしたさね!」


「パン屋のおばさん! あのね……」



私がママのことを話すと、医者を呼んでくると言いおばさんは駆けて行った。


おばさんが道行く知り合いに声をかけたのか、近所のおじさんおばさんが宿に来た。



「ナンシーさん! 大変だ、ベッドに運ぶからな!」


「医者は?!」


「今呼びに行っているそうだ」



おじさんおばさん達が看病している。

私に出来ることは……。



◇ ◇ ◇ ◇



・トミタ(猫)視点



四次元とはつまり、座標軸が4つあるということだ。

X軸、Y軸、Z軸の3つが空間、そして√-1の虚数軸が時間を指す。

俺の解釈はそんなところだ。

物理学的に見れば間違っているのだろうがそんなこと知らん。


ここで【四次元空間】の性質を思い出してみよう。

こいつの中に入れた物は、時間が止まっている。

つまり虚数軸方向の物体速度が0にされるということだ。


そこで実験、動物や魔獣を入れたらどうなる?

中で動きが止まってしまうのか?


バッタを3匹ほど実験してみた結果、四次元空間内で動かれたらくすぐったい。

HPも少し減っている。


バッタを取り出し、中の様子を聞いてみた。

普通に動くことも出来るらしい。


次に砂時計を錬金術で作って、それを設置した後、俺自身が、四次元空間に入ってみる。

中は真っ暗なので【ライト】を使ってみたが、上手くいったようだ。


1分くらいして出てきたが、砂時計の砂が落ちていない。

つまり、中に居る間は外の時間が止まっているということだ。


これは中々面白い実験結果だ。

次にどうやったらHPが減るのか、どのくらい減るのか実験してみようか?


ん? 森に侵入者?

8歳の少女?


鑑定したらネルだった。

俺に用事だろうか。


俺は自分を【四次元空間】に収納し、俺のスキル射程内にある、森の入口で【四次元空間】を開く。

四次元ワープってやつだ。

ネルの前に現れた。



「にゃー(どうした?)」


「猫さん! ママを助けて!」



ナンシーさん?

HPがヤバくなったら俺の【ヒール】が自動発動するはずだが。

今のところ発動していないので問題ない気がするが。


まあいい、行ってみよう。


ネルと俺を【四次元空間】に収納、そして宿屋前に【四次元空間】を開く。

うむ、四次元ワープは便利だな。


俺とネルは宿屋に入ることにした。

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