167.パンデミック


寝込んで咳き込んでいたナンシーさんを【ヒール】と【解毒】で治した。

今はゆっくり眠っている。

ネルと近所の人達が看病している。


MP切れのヨツバに【ヒール】でMPを分けて起こす。

そしてヨツバとこっそり、留守してるマック君の部屋へ行く。



「猫さん、ナンシーさんの結核を治してくださってありがとうございます」


タイプライターを取り出し『ああ』と打つ。


「私を連れ出したということは、結核の世界的流行パンデミック対策の相談ですね?」



ほぅ、パンデミックを知っているのか。

ならば話が早い。



『探索によれば、この町で1000人越えの患者が居るらしい。

俺が全員【ヒール】しようとしてもMPが足りない』と書く。


「既にかなり広まっているのですか。

日を分けて治療すると、どんどん感染が広がり手に負えなくなる、というわけですね」


『どうすればいいんだろう?』と打つ。


「この世界、ワクチン打ってる人なんて一人も居ないから、あっという間に広がりますね」


『だよなぁ』と打つ。



大量の死者、混乱し暴動へ走る民衆、そんな未来が見える。

早く手を打たなければ手遅れになるぞ。



「抗生物質を大量に作ることは出来ます?」


『現在は森のカビに頼んでペニシリンを作ってもらっているが、それは効かない。

だから俺が錬金術を使って新規に作ることになるだろう。

錬金術ならMPを使わないからな』と打つ。



しかし、医者の数は少なく、さらに雑貨屋クローバーで薬を貰い使っている医者は数人しか居ない。

これだと薬が行き渡らない。

どうすれば……。



「結核患者を集め、その場で薬を配布するというのは?」



ヨツバは知らないだろうが、結核の治療は現代でも薬を使って、半年くらいかかる。

しかも入院が必要なこともある。

とても薬だけでは対処が……待てよ?

俺の【森の主】称号、そして錬金術を使えば、いける!



『まずは患者の隔離から始めるとしよう。

王様に手伝いの兵士を手配してもらおう』と打つ。


「患者の隔離場所と、彼らのための食料の用意も必要です」



隔離施設を森に錬金術で作ろう。

そうすれば俺が頑張れば……何とかなりそうだ。


だがするべきことが山積みだな。

忙しくなるぞ。


まずはエルフの建築家に、隔離施設の設計図を描いてもらうか。



◇ ◇ ◇ ◇



・フランベル4世視点



「陛下! 流行中の原因不明の病で倒れる者が300人を超えたようです!

その病に感染していると疑わしき者はその倍以上居る模様!

今後さらに拡大する恐れありです!」


「くそっ! 感染者は隔離せよ!」


「どこへ?! 王都に隔離施設はございません!」



ブン!

目の前に黒い亀裂が現れ、太い茶トラ猫が現れる。



「にゃー」


「魔お……大魔導士殿?!

一体どこから?

悪いがそなたの相手をしている暇は無、なな何だその紙は?!」



魔王トミタが提出したその紙は、森の入口に建てられた臨時の隔離施設の情報。

そして、感染者を隔離施設へ集めるための兵の要求。

さらに感染者のための食糧を国に要求する旨が記されていた。


その上驚くべき事に、感染者はすぐに治す、とまで書いていた。


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