163.パスタの美味い店


・防衛大臣視点


兵士の訓練指導をしていると、マクドーン氏、偽名でニコを名乗っている錬金術師が現れた。



「王様への手紙です」


「ふむ、すぐに届けに行くとしよう」



国防のことに対する返事を書いているのだろう。

その場で見たいのをぐっとこらえて、王室へ向かう。



「パーシー君、ちょっと出かけないかい?

城の外にある、おいしい食堂まで」


「お伴します」



マクドーン氏とパーシーは外食に出かけるようだ。

私もあのような若々しい頃があったものだ。


いかん。目の前の仕事に集中しなければ。


王室へ手紙を持って行き、人払いを済ませ、王と共に手紙を見る。



『拝啓。フランベル4世様。

国防の件、遠慮申し上げます。

トミタ・ミナモト』


「……駄目か」


「陛下、かの大魔導士殿は、とある宿と店をひいきにしているようです。

それを盾に脅せば」


「怒りを買って、国が滅ぶな」


「……」


「勇者が逃げたことはいずればれる。

今は遠征に向かわせていると誤魔化しているが、長くはもたない。

至急、兵士を増員するのだ、こっそりとな」


「はっ!」



やれやれ。勇者達め、身勝手をしてくれる。

あれだけ可愛がってやったというのに。


まあいい。彼らは死んだものと考えよう。

いつまでも居ない者のことを考えても仕方ない。


私は兵士の志願者を募る依頼を出すために、城前の役場まで足を運ぶことにした。



◇ ◇ ◇ ◇



・錬金術師マクドーン視点



ここはボクが気にいっている食堂の1つ。

パスタ、という黄色い麺を専門に扱っている店で、廉価で美味しいパスタ料理が食べられる。


パーシー君に声をかけたのは、長く護衛してもらっていた男で話しかけ易かったからだ。

今回、彼にちょっと相談に乗ってもらおう。

もちろん店はボクのおごりで。


店で注文し代金を先払いすると、カルボナァラが2人前運ばれる。

卵や牛乳を絡めたパスタ料理で、美味しく頂いた後、相談を切り出す。



「実は、頼みたいことがあるんだけど」


「何でしょう?」


「ボクも、もう19になって、そろそろ身を固めないと世間体が悪いらしい。

兵士詰め所や知り合いの男で、フリーなおすすめの人を教えて欲しい」


「……?!」



パーシー君はどうして驚いているのかな?

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