103.おねがいがあります
夜中。皆が寝静まった時間。
俺は宿屋の管理人室へ行く。
ネルとナンシーさんは眠っている。
ヨツバは横になっているが、起きている。
「にゃー(『闇を照らせ。ライト』)」
窓の外に光の玉を作る。
それによって光が少しだけ部屋に入る。
ヨツバは起き上がる。
俺は彼女の前に文字盤を立てかけて、隣に座る。
『ねこさん、こんばんは』
ヨツバが文字盤をぺたぺた触り、挨拶を指し示す。
『こんばんは』と書く。
喋れない者同士がこうして意思疎通するってのも、何だか不思議だな。
『とつぜんですが、ねこさんにおねがいがあります』
『何だ?』と書く。
『えむぴーをきょうかするそうびがほしいです』
MPを強化する装備?
俺の手持ちの腕輪はATKとMDFを強化する能力がある。
MPを強化する腕輪みたいなのもあるのだろう。
『ごめん、持ってない』と書く。
ヨツバは残念そうにした後、『じゃあ、ぱわーれべりんぐたのんでいいですか?』と示す。
ヨツバの説明によると、パワーレベリングとは、レベルの高い者が低い者を連れて、レベル上げを手伝うことだそうだ。
強い奴を倒せば、経験値が手に入ってレベルアップするとかシルフ婆さんが言っていたな。
『いいぞ』と書く。
ヨツバがレベルアップなるものをすれば、恐らく体も強くなるだろう。
そうなれば、この前みたいに病気で死にそうになることも減るかもしれない。
あくまで可能性の話であるが。
『では、わたしがかせげるようになったら、てつだいのほうしゅうをわたします。
4まんごーるどくらいでいいですか』と示す。
『報酬なんぞいらん。
赤ん坊に金をせびるほど、俺は落ちぶれていないぞ』と書く。
『ねこさん、おひとよしとよくいわれています?』と示す。
うるせぇ、ほっとけ。
俺だって、自分が損な性格していることくらい知ってる。
『ナンシーさんが起きるまで、あと5時間くらいだ。
それまで手伝ってやるよ』と書く。
俺はヨツバを【念動力】で背中に紐で固定し、夜の町を駆け抜け、町を出て森へ入るのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます