102.写生


翌日、逃げるように町へやって来た。

エルフ達は、移住場所が見つかるまで、しばらく俺の自宅や近場で暮らすらしい。

それはいいのだが、あいつらの相手をしていると疲れる。


ネルとマック君に癒してもらおう。


俺は宿に着くと、いつも通りネルが迎えてくれた。



◇ ◇ ◇ ◇



「これを王様に? 分かった、届けておくよ」



フランベルジュから聞いた昔話を書いた物だ。

それを王様に渡すように、マック君に頼むことにした。



「猫さん! 今日は皆でお絵かきしよー!」


「ごめんネルちゃん。ボクはこれを王様に届けに行くから、遊べないや」


「えー」



マック君は出かけてしまった。

仕方ないから、ネルと二人で互いの絵を描くことにした。

俺が渡した紙に、鉛筆もどきを使って。


1時間後、ネルが見せてくれた俺の絵は、デフォルメの可愛らしい丸い猫だった。


俺の紙には見たままのネルが描かれている。

写生くらいなら俺でも出来る。

ネルに渡すと喜び、ナンシーさんに見せに行った。


後日、ネルが描かれた絵は枠に入れられ、宿の壁に掛けられるのだった。

枠の透明ガラスはマック君が錬金術で徹夜で作ったらしい。


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