92.ヨツバ、プレゼントを貰う


ヨツバと意志疎通したかったのだが、結局、今日はナンシーさんが彼女に付きっきりで世話してたので、お預けとなった。

仕方ないから、俺が自主勉用に使っていた巻物と、文法や単語のメモが書かれた板を渡すことにしよう。

俺はそれらを取り出す。



「にゃー」


「ん? この巻物は? 童話と、下に変な文字が書かれてるけど。

それに、この大量の木の板は何?」


『ヨツバに見せてやって欲しい』と書く。


「よく分からないけど、猫さんがそう言うってことは、必要なことなんだろうね。

分かったよ、ヨツバちゃんに見せるよ」



転生者は多分、現地語の勉強から始めなければいけない。

少しでもヨツバの役に立てば良いのだが。



「猫さん、次は何して遊ぶ?」


ネルに聞かれたので『すごろく』と書く。


「ニコが新しいすごろく持ってきてくれたから、それで遊ぼう!」



俺達はすごろくで遊ぶことにした。



◇ ◇ ◇ ◇



・ヨツバ視点


今日も今日とて、ナンシーさんの乳を吸う作業に入る。

それはいいのだが、今の私は排泄物垂れ流しである。

非常に恥ずかしい。


介護や入院してる高齢者が、おしめを付けるのを屈辱だと感じるという話を聞いたことがある。

今ならその気持ちが、とてもよく分かる。



「ヨツバったら、全然夜泣きしないのよ。心配だわ」


「夜泣きするものなのですか? お姉さん」


「ええ、そりゃもう。ネルが小さい頃はね、こんなことがあったのよ……」



ネルちゃんの幼少時代の頃の話を始めるナンシーさん。

夜泣きどころか、こっそり夜にスキル訓練をする赤ん坊でごめんなさい。



「そうだ、思い出した。これをヨツバちゃんにプレゼントしましょう」


「まあニコさん、ありがとうございます」



ん? 巻物と木の板?

……わぉ!



「おとぎ話に、単語……その下には見たことのない文字がありますね。

ニコさん、これは?」


「ヨツバちゃんに必要なものです、多分」



それは、おそらく現地語と対応した日本語が書かれた書きものだった。

ありがたい! 実にありがたい!



「何だか赤ん坊が喜んでるみたい。ありがとうございます」


「いいえ、ヨツバちゃんが喜んでくれて何よりですよ」



読みたい! 読みたいけど……私は未だハイハイすら出来ないほど非力なのだ。

……筋トレしようかしら。


ま、そのうちナンシーさんかネルちゃんが、あの書きものを私に見せてくれるでしょ。

その時に勉強させてもらおう。


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