89.ヨツバ回復
「猫さん?」
ネルが俺に気付いたようだ。
挨拶しておくか。
「にゃー(こんばんは)」
「あのね、猫さん。ヨツバが死にそうなんだって。
もう助からないって」
「ま、待て。皮膚のただれが……消えている?!」
顔を上げた医者が慌ててヨツバを診察する。
……ひょっとしてお前の持ってた菌がヨツバに移ったんじゃないだろうな?
「治っている! さっきまで、本当に死にそうだったのに!
いったいどうなって……」
「ヨツバ?! ヨツバ!」
「あー、あー」
皆、ヨツバの病態が回復したことに気付き、ほっとする。
よかったよかった。
さて、俺は帰るかな。
俺が居ないと、シルフ婆さんが心配するからな。
というわけで、再び森へ帰ることにした。
ネルには『また明日』と書いて伝えておいたから、問題ないだろう。
◇ ◇ ◇ ◇
・ヨツバ視点
あの猫が助けてくれたんだと分かった。
それまで、痛くて、熱くて、苦しくて、本当に死にそうだった。
私はまだ産まれたて。
免疫力が無いのは知っていたけど、あんな恐ろしい病気にかかるとは思わなかった。
だが私は生きている。
助けてくれたあの猫に感謝だ。
すぐに帰ったが、彼にも用事があったのだろうか。
とにかく、あの回復スキル、何としても入手しなければならない。
今度会ったら教えてもらうことにしよう。
その前に、どうやって意思疎通するかが問題だが。
……そうだ! 【フリーズ】のスキルで水を凍らせて文字を作れば!
来ていた医者やらが帰った後、ナンシーさんが寝たタイミングで、空気中の水分を濃縮し、氷を作るイメージでスキルを使う。
それっ!
私の目の前に『あいうえお』の5文字が書かれた小さな四角ブロックが落っこちた。
あ、駄目だ、眠い。
これがお約束の魔力切れによる脱力というやつか。
おやすみなさい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます