88.TEN
□前書き□
ちょっとシリアス注意。
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夜。俺は眠っていたが、はっと目が覚めた。
そして、真夜中の森を走っている。
町目がけて。
俺はこの3年間、何も遊んで食ってばかりしてきたわけじゃない。
スキルについても、それなりに調べたりしたのだ。
まずスキルに消費するMP。
これは固定、自由に増減出来る、レベルに応じて増える、反対に減る、の4パターンあることが判明した。
例えば【ライトニング】は自由に増減できる。
【鑑定】は固定消費だ。
また、スキルの予約という方法もあるらしい。
これは、特定の条件下でスキルが使われるように出来る方法だ。
例えば、俺が1時間後に、【四次元空間】から水を出したいとしよう。
俺は1時間後に【四次元空間】から水を出すイメージを行う。
そうすることで、1時間後にその現象が起こるのだ。
また、俺が傷ついたら【ヒール】を使う、みたいな予約も出来る。
調べたら、スキルの予約は最長5日。
射程は、森と町くらいなら離れていても届く。
ただし回数は1度きり、だ。
その1度が終わったら、再び予約で使わなければならない。
俺は、アウレネ、シルフ婆さん、フランベルジュ、ネル、ナンシーさん、ヨツバ、マック君に【ヒール】の予約をしている。
彼女らが何らかの理由でHPが減ってヤバくなったら、自動で【ヒール】が使われるのだ。
そして、俺には誰に対してスキルが使われたのかが分かる。
ヨツバだ。彼女の身に何かあったのだ。
俺は森を走りつつ、【捜索】でヨツバの位置情報を所得し、【ヒール】を遠隔でかける。
だが、効果が薄い。スキルは距離によって減衰するのだ。
目の前で使わなければ、相手の病名が分からなければ【ヒール】の効果は激減する。
俺はヨツバを遠隔で【鑑定】し、HPを確認すると残り2だ。
何度も【ヒール】してるというのに。
遠隔の【鑑定】では、ヨツバの病態は分からない。
早く目の前に行かないと。
森を抜け、町へたどり着き、宿屋に入る。
入口が開けっぱなしだったのだ。
俺は遠慮なく宿屋に駆け込み、管理人室へ入る。
医者のジジイが下を向いて歯ぎしりしている。
ナンシーさんとネルが泣いている。
マック君も下を向いている。
ヨツバは、ゼーゼー言っていた。
体中にヤケドのような赤いただれがある。
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鑑定結果
病名:中毒性表皮壊死剥離症(TEN)
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マ ジ か?!
これって、薬で起こる
現代でも結構な確率で死ぬぞ?!
何でヨツバが?!
俺は【ヒール】を唱える。駄目だ、効かない。
原因も調べなきゃ駄目か。
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鑑定結果
原因:メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)
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思い出したぞ。
成人ではTENは薬が原因である場合が多いが、小児とかなら感染症が原因の場合が多いんだった。
よし、今度こそ【ヒール】だ。
ヨツバの体が副腎皮質ステロイドと抗体を大量に作るようにイメージする。
ステロイドは時間をかけて少しずつ生産量を減らすようにしないと急性副腎不全を起こすから、そこに注意して【ヒール】を調整、っと。
さらに【解毒】でMSSAの作った毒を一掃する。
さらに【ヒール】で皮膚のただれを治す。
……よし、【鑑定】でHPがマックスになったぞ。
病気も消えた。
「にゃー(やれやれだぜ)」
スキルの予約機能に気付かずに居たらと思うとぞっとする。
俺は再びヨツバに【ヒール】を予約でかけておく。
備えあればなんとやら。
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