87.こっくりさん
植樹をした次の日のことだ。
「キュオオオオン(不思議猫よ、頼みがあるのである)」
自宅で、ヨツバとの会話用に、あいうえお等が書かれた板を作成中のところに、石像フランベルジュが話しかけてきた。
「にゃー(何だ?)」
「キュゥオオン(我は今一度、人間達にチヤホヤされたいのである。
何か良い方法はないであるか?)」
チヤホヤ、ねぇ。
「にゃー(それ以前に誤解を解く方が先決だと思うぞ)」
「キュォオオオオン(やはりそうか。しかし、彼らには念話が通用しなかったからな……)」
そうだな。3年前は、問答無用で攻撃されていたからな。
今度町に入っても、同じようになるだろう。
まず、フランベルジュが無害であるということを伝えねばならないな。
「にゃん(俺がマック君を通して国王さんに伝えておいてやるよ)」
「キュオオオン(それで国王や関係者は何とかなるかもしれんが、町の者には恐れられたままであろうな……)」
「にゃーご(町の人からもチヤホヤされたいのか?)」
「キュオン(である)」
ふーむ。
なかなか無茶な要求だぞ?
この強面の石像が人気者になるような工夫ねぇ。
「にゃー(今は思いつかないなぁ)」
「キュオオオオオン(ま、気長に取り組むのである。
町で受け入れてくれるまでは、森でのんびり暮らすのである)」
「にゃー(また何か案があれば、教えてやるよ)」
俺は、作業途中の板の加工に再度取りかかることにした。
◇ ◇ ◇ ◇
よし、完成だ。
板は縦50cm横80cmくらいだ。
縦横1:1.618が黄金比らしいな。
絵画やってる奴でなくても知ってるんじゃなかろうか。
その板に大きめの字で、あいうえおの50音、濁点や半濁点付き文字、数字、yes、noをかきこんでいる。
これを指差すように使うことで、言葉を話すことが出来なくても、鉛筆を持つほど力がなくても、意思疎通が出来るだろう。
ヨツバはこんな世界に赤ん坊姿で転生して、当惑しているに違いない。
一足先にこの世界で生活していた俺が、彼女をサポートしてやるのだ。
城の勇者達のサポートはしないのか、だと?
彼らは城でサポートを受けているから俺が出しゃばるまでもなかろう。
体型もほとんど大人な彼らは、何かしたいのなら自分でするだろう。
というか勇者達は普通の高校生の体だったのに、ヨツバは何故赤ん坊に?
女神ハーディスに何を願ったのだろう。人生やり直したいとか?
まあいい。
明日さっそく持って行って文字盤を使ってもらおう。
にしても、こういう板を使った占いか遊びがあったような?
何だっけな?
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