56.こいつはくせぇッー!
勇者少年少女3人組みは外で野宿を選んだみたいだったので、かまどで火を焚いてやった。
少しは温かくなればいいが。
俺は火の面倒を見つつ、木の枝をツタでカゴ状に編んでいた。
何を作っているかというと、魚取り用のトラップだ。
返しが付いているので、一度このカゴに入った魚は出られなくなる。
もちろん使用する時は、中に重りと餌を入れる。
ふむ、中々良い出来だ。
俺が魚取りに惚れ惚れしていると、日が昇り始めた。
「にゃー(起きろー)」
イノシシもどきとバッタを粘土の皿で焼きながら、少年達に呼びかける。
反応なし。
俺は勇者少年の1人に飛び乗る。
「ぐぇっ?! 何しやがる?!」
「にゃー(おはよう)」
この後俺達は朝食を済ませた。
ちなみにバッタは俺しか食べなかった。
美味いのに。
少年少女達は城へ帰って行った。
アウレネはウッドハウスに籠っていた。
起きている気配があったが、少年達に遠慮していたらしい。
◇ ◇ ◇ ◇
魚取りを川に仕掛けて、俺は町の宿屋へ遊びに行くことにした。
町に入ったので、先に猫の集会に挨拶しておこうか。
俺を見かけて、長老猫が寄ってくる。
「にゃー(おお、猫又様、よくぞいらっしゃいました。
この前の蛇肉は、皆喜んでいましたよ)」
「にゃーご(うむ、くるしゅうない)」
俺の渡したバジリスク肉は好評だったようで良かった。
「にゃー……(ところで猫又様、ちと申し上げにくいことがあるのですが……)」
「にゃん(言ってみろよ)」
何かトラブルでもあったのだろうか?
俺もなりゆきとはいえ野良猫になった身。
猫同士の助け合いも喜んで引き受けるつもりだ。
「にゃー(その、猫又様、臭います……)」
「にゃー!(申し上げにくいことって、俺の悪臭かよ?!)」
確かに、猫になってから一度も体を洗っていない。
だが、他の野良猫だって同じはずだ。
なのに悪臭は一切しないぞ。
何故だ。
「にゃーん(そのボサボサの毛、油のついた体、もしや猫又様は毛づくろいをなさってないのでは?)」
「にゃー!(そうか! 毛の手入れか!)」
なるほど。
そういえば一度も毛づくろいはやってなかったな。
だが、野良猫と同じく自分の舌でそれをやってしまうと、腹に毛玉が溜まってよろしくない。
するなら櫛を作ってからだな。
俺は木を取り出し、爪で削ってちょちょいと櫛を作る。
櫛で自分の体をすく。
おう、たくさん毛が取れた。
取れた毛は四次元空間にでも収納しておこう。
毛づくろいして身だしなみを整え、野良猫たちに挨拶した後、俺はネルの居る宿屋へ向かうのだった。
□□□□□□□□□□□
□あとがき□
勇者少年達はここで退場です。
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