10.来るまた
翌朝。俺は差しだされた朝食を食堂で食べている。
肉片入りのスープだ。
玉ねぎや香辛料の類、その他、猫にヤバそうなものは入ってなさそうだ。
ぺろり。塩も入ってない。
素晴らしい。
猫に余計な塩分は
腎臓が悪くなってしまうからな。
俺の舌は大したもので、アツアツのスープを舐めても平気だった。
ひょっとすると俺は、猫じゃないのかもしれない。
皿はあっという間に空になった。
ごちそうさま。
さて、そろそろ町を出るか。
俺は入口の前に立ち、扉を押して開ける。
「猫さん、行っちゃうの?」
少女ネルがこちらを見る。
泣きそうな目で。
また泣かれたら困る。どうしようか。
お、そうだ。
俺は四次元空間からバジリスクの皮を少し取り出し、自分の爪で自分をチクリと刺して血を付け、皮に文字を書く。
『来るまた。ありがとう』
俺は文字を書いた皮を少女に見せる。
少女は文字を見て、
「約束だよ!」
俺を笑顔で見送りしてくれた。
よかった。
付け焼き刃の現地語は通じたみたいだ。
俺は宿から出て、森に向かう。
にしても、町の臭い匂いは気にならなくなったな。
鼻が慣れて馬鹿になったんだろうきっと。
◇ ◇ ◇ ◇
「あのね、ママ! 猫さんまた帰ってくるって!」
「そう。よかったわね」
「うん!」
もちろんナンシーは、娘のネルが言ってることを本気にしたわけではない。
しかし、娘が泣き叫ぶと面倒だから、適当に話を合わせてあげることにした。
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