11.闇を照らせ。ライトニング



森に帰った俺は、バジリスクの皮に自分の血を使って、人間の現地語を必死でメモしていた。


あのネルという少女が読んでくれた話は、シンデレラみたいな童話だったな。


俺は猫に生まれ変わったが、記憶力は衰えていないようだ。

むしろ生前より冴えている。本の映像がくっきりと思いだせるぞ。


ようやく、現地語とその下に自分なりの翻訳を書いた皮の巻物が完成する。


現地語は英語みたいな文法だから、すぐに使いこなせるに違いない。

さいわいにも名詞にはヨーロッパ言語みたいな女性名詞、男性名詞に相当するものはないみたいだし。



「にゃー(疲れたー)」



俺はバジリスクの肉を食べ、穴を掘ってトイレを済ませて穴を埋め直す。

そして、いつもの倒れた木の場所で昼寝することにした。


おやすみなさい。



◇ ◇ ◇ ◇



夕方になって目が覚めた。

むむ、暗くなってきたな。


あの宿屋のお姉さんが使っていた魔法、俺も使えないかな?


確か呪文は、『闇を照らせ。ライトニング』だったっけ?


よーし、やってみよう。



「にゃー(『闇を照らせ。ライトニング』)」



ドゴオオオオオオオン!



俺の目の前に雷が落ちた。

何でだよ。呪文が間違っていた?

……あ、ライトニングじゃなくてライトだ。


ライトニングだと雷が落ちるのか。気を付けよう。



「にゃー(『闇を照らせ。ライト』)」



俺の目の前に、光の玉が現れる。

成功だ、やった。


でもよく考えたら、俺って猫だから、夜でもよく見えるんだよな。


……待てよ?

見えるといえば、そもそも猫の視力って0.3くらいじゃなかったっけ。

俺は木の上から町を見渡せるくらい視力があるんだが。


本当に俺は猫なのだろうか? 猫っぽい何かなのかもしれないな。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る