転生先はチート級
カジキマグロによる殺傷の検分を終えた所で、思わず生み出してしまった静寂を破る様に咳払いをした女神が神様的な雰囲気を出し始める。
『ん゛ん゛っ……。「うわっ、咳払いオッサン臭っ」うるさいですよ!?……え、えーと。ま、迷える仔羊よ。此度は偶然の不幸が重なり現世を離れる形となった訳だが……もし、汝が希望するのであるなら転s「します」アッハイ。』
最早空気感とか投げ捨てられた事に不服に思っているだろう女神など構う事なく、食い気味で転生希望と言う。というか不意なカジキマグロ死は誰でも転生したいと思う。もうちょい死に方選びたい。
『となると、汝にはまず2つの選択肢が与えられる。1つはこのまま同じ世に生まれ直すか、別の世に生まれ直すか。どちらにせよ此度の不幸に免じて待遇の良い転生にするが……?』
「1番いい異世界で頼む。」
『???』
まじかよ、確かにかなり古いネタらしいけど女神には伝わらないのか……。同じ神界ネタなのに。
『良く分かりませんがそうですね。それなら、人型の種族の垣根はあまり無いけどその分魔物やそれを連ねる魔族の侵攻が激しい世界があります。その世界を救う1人になって頂けないでしょうか?』
「喜んで。」
これはつまり勇者的な感じかつ俺TUEEEE出来そうな感じ?!しかも優遇されるって事はチート有なのでは???
『では、汝にはどちらかの待遇を選んで頂く事になる。人の身で伝説の武器を備えるか、人ならざる身で魔術・秘術を会得していくか。』
キタコレ!!!ここは大事だ。何が大事かと言われたら単に無双系で行くのか成長系で行くのかの違いによって生まれる冒険の楽しさの違いだ。道行く敵をなぎ倒しながら『キャー!素敵!!!抱いて!!』と言われる人生もよし。最初は無能だが成り上がっていき『キャー!憧れる!!!抱いて!!』と言われる人生もよし。どちらが好みかの違いだが……キャラ育成が趣味の俺には選択肢は1つしか無い。
「勿論、別の種族になる!!!」
『……ほう。理解した。それではこの中から選ぶがよい。ちなみにオススメ診断とかもあるぞ。死に方によって結果が変わる。』
試しにどうだ?と僕の周囲をぐるぐる回りながら催促してくる女神を無視しながら一覧を見てみる。どうせならテクニカルな種族になりたい。レアかつ活躍するには割と難しい系の。となるとRPGでの筆頭は吸血鬼だ。何故テクニカルな種族であると言えるか。大抵の場合吸血鬼にはMPの概念はなく、HPを消費して攻撃、ダメージを与えたら割合回復というものが多い。つまり、序盤はHPの最大値が低い為スキル1つ無駄に打つと一気に不利な状況になりやすく、対人等でもハマると1番強い種族ではあるのだがスキルを回避され続けると勝手に瀕死になるなど玄人向けな事が多い。代わりに、育ってしまえば高火力高耐久、そしてMPがない事による継戦能力の高さが手に入る為成長系にはうってつけの種族でもある。
「……では吸血鬼で。」
『えっ……本当に?!』
「???」
『あっ、いや。そんなドM種族選ぶとは……まだ診断結果に出てきたマーマンの方がマシなレベルなのに……いや、まぁ逆に言えば同じ悲劇は繰り返されないから良いのかも?……おし。変更は聞きません。聞きたくありません。変えますね?!』
「えっ、なんか色々不安しか無い単語ばかり聞こえたけど『あーあーキコエナイキコエナイ』ちょっ……!?」
こちらの不安など御構い無しに僕の足元が光を放ち簡易的な魔方陣がぐるぐると回り始める。いや、それよりあの女神めっちゃキョドってる方が木になるんだけど。
『自分で選んだ道なので、女神ちゃんは不満聞きません。間違っても◼️◼️◼️◼️◼️に騙されたなんて言わないで下さいね?!』
「ふざけんな!!再確認の時間儲けろ!!!後名前さっきから聞き取れないからそれ!!」
『あっ、そういや言語の適正あげ忘れてましたね。そちらは追加しておきます。そして私の名前はアルーー』
漸く女神の名前を聞けそうになった所で魔方陣が発動し、視界が全て光に覆われる。そしてそのまま急激な眠気を感じた僕は抗う事も出来ずに目を閉じ、眠りについてしまった。
転生先が火力特化種族なのに肉壁スキルしか覚えれないんですが。 米堂羽夜 @zys
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