【2020年夏の猛暑特別話】熱・中・症
今日も今日とて俺は両親が経営している書籍喫茶【Natume's Cafe】で働いている。
夏休みという事もあり、学生も度々ご来店。
まあ、大体は常連さんが占めてるんだけどな。しかも、皆一様に同じ事を言って入ってくるんだ。
カランカラン
丁度、扉に付けてるベルと一緒に店にお客様が来たな。
「…み…くぅん」
「………」
違うぞ。
決して正解が『猛暑で行き倒れるのを耐えながら今にも死にそうな顔のゾンビっぽい一葉が現れた』ではないからな。
つか一葉さん声になっとらんがな。
ってそんな事を考えてる場合じゃねぇ!
「一葉!」
「…おお…ここは…テンゴク…だよ」
そうそう、これが正解って違ぁああう!
一葉の顔色が少しだけ悪い。多分熱中症になりかけてるな。しかも空腹状態だからなお悪い。
事が気になってる人と心配してくれてる常連さんの視線が俺と一葉に向いてるが、そんなのは無視して席を見回した。
やっぱり満席。
「親父!店離れるわ。紅葉さんすんませんけど、後よろしくお願いします」
「文、それより後は一葉ちゃんの側ついてやれ」
「ありがとう」
「夏目くんあと、一葉ちゃんの家に電話しないと」
「はい!」
忙しなく俺は一葉をお姫様抱っこでなるべく揺らさないように家の中に運び、ソファに寝かせた。
「一葉、水持ってきた。飲めるか?」
ソファでくてんと寝ながら弱々しく一葉は頷いた。
一葉の頭を軽く下から持ち上げてストローに口を付けさせる。
「ゆっくりな」
「…う…ん……」
ある程度飲ませた俺は一葉を寝かせて、冷えピタさんを一葉おでこに貼った。
家の方は空調が良い方で涼しいけど、一応クーラーをつける。
次は電話…って俺知らない。
一葉のスマホにあるだろうけど……何処?
あとは、食事か。冷えすぎも良くない。少し冷たい程度の蕎麦にするか。
具材は……納豆、オクラ………あと、おろし大根だな。
それにしても、太陽がギラギラ照り出る中でも来るなんてな。嬉しいけど、心配になるから複雑だよ。
「……ん、う?…文くん?」
「一葉、大丈夫か!」
「…うん……えへへ。ごめんね心配かけちゃって」
「全くだよ!!」
「ふや!ふ、ふみきゅん!いき、いきなり抱きつくなんて、えっちぃよ!」
しまった!
心配の余りつい抱き締めてしまった。というか抱き締める事がえっちぃなら世の中既にえっちぃ事だらけだぞ。
というか対界宝具級の実りにまともに抱き締めるに抱き締められなかった。
あれはたわわという名の難攻不落の要塞だ。
「……何か食べれそうか」
「うん少しは、さすがの一葉様も今は食欲なくなってしまったぜよぉ」
「そうか」
今回は一葉龍馬のお腹の猛獣も大人しくしてるんだな。
「何か文くんが変な事を考えてるのを感知」
「またレーダーかよ。いくつあるのそれ」
「……まだまだ増殖するよ」
「怖ぇよ」
「ふ、ふ、この新人婦警から逃げられると思わないで」
「……そうか、もう二度と一葉に飯は作れなくな…」
「文くん逃げなさい」
人差し指をキッチンの方を指す。
現金だなぁ。
「ちょっと待ってろ。あ、食事用意してる間水こまめに飲んどくんだぞ」
「えへ…はいあ〜い」
そして、俺は冷やし蕎麦を作っていった。
後は、一葉が寝ている間に作って冷やしておいた出汁つゆと合わせて納豆を乗っければ、完成。
「お待たせ」
「清涼ですなぁ」
「たぁんとお食べ」
「そいじゃあ、いただくとするかのぉ」
そう言って一葉は蕎麦をつるつると吸って食べる。
しかも、いつもガツガツした感じを思わせるのに大人しく静かに黙々と食べていく。
ちなみに量は少なめにしてある。
「……おいひいよふみふん」
「飲み込んでから喋りなさい」
まったく。
にしても、食べてても滅茶苦茶この美少女は絵になる。
ずっと見ていたくなる。
髪を少し掻き上げて食べる所なんか『美』と表現せざる得んぞ。
「文くん?何かついてる?」
「い、いや」
「あ、もしかして…見とれた?」
「……」
図星を突かれ顔が熱い。
「……ふみゅ」
可愛い過ぎだろ俺の親友美少女。
的中させたのは良いけど、顔真っ赤にして。それに「ふみゅ」って。
冷静になろう。
「の、伸びる前に食べよう」
「…あ、う」
それから暫く、俺と一葉はただ沈黙してはしどろもどろな会話とは言い難い会話をして、途中、一葉に自宅の電話を教えてもらい電話して日が沈み始める辺りの18時に迎えに来るということで俺の部屋でゲームして遊んだ。
その最中、一葉が俺に視線を向けてはふみゅふみゅ言うのでどうしようもなかった。
俺はというと、可愛い過ぎる一葉をチラ見るのに熱中してゲームどころじゃなかった。
――――――――――――――
ストーリー進んでないのに何作ってるの!?と思いつつも思い付いてしまったので書きました。
という訳で喫茶店来たのにお家に突入回でした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます