第26話 行き倒れ美少女の〇〇デレアタック!Part2
「ご機嫌よう文くん、今日もバイ畜(アルバイト社畜)として頑張ってる?」
放課後に一葉は今日も現れたと思ったら突然クールな雰囲気を纏って妙な毒舌を吐いた。
いやセリフ的にはめちゃくちゃ優しいんだけど、口調はクールでトゲがある。
しかもこれが結構様になってる。俺は今日もそういう気分かと一葉に話を合わせる。
「ああ、今日も来てくれてありがとな一葉、いやいやなのに来てくれて」
「そ、そうね…偶々、たまったま暇で通り掛かったから来て上げたの……勘違い…しないでね」
このデレ反則だろ!
「はい、今のでクーデレおしまーい」
「切り換えはや!」
「実は面倒だったんだよねぇ」
面倒だったんかい!
でも、なんだかんだで楽しんでたよな。まあ、俺としてはいつもの一葉が良いから嬉しい。
ちょこんといつものカウンター席に座ると、一葉は手を挙げた。
「文くんオム『きゅるるる』…ふ、文くぅん」
最近、注文する前にお腹が鳴るのは何故だろうか。
カウンターから小さな子どものように泣き付こうとする一葉の頭をよしよしと俺は撫でる。
「………ふみゃ〜」
よし、可愛いからあと3分ほど撫で続けてやろう。
この可愛い行き倒れ美少女め。
暫く慰めたあと、俺は一葉の注文に取り掛かった。
オムという事は今日もオムライスだと踏んだと踏んで一葉の前に出した。
「文くん分かってるぅ!」
「何となくだよ、何となく」
「でも、それだけ私の好みを理解してきてくれてるってことだよね」
「まあな!」
自信満々に胸張ったけど、店のメニュー限定でしか無いんだよな。これが。
「すいませーん」
お客様が呼ぶので俺は向かおうとキッチンを出て一葉の後ろを通り過ぎた直後、制服の袖がグッと引っ張られた。場所からして一葉が掴んできたんだろうと思って振り返ると、ハイライトの無い瞳でこっちを見ていた。
怖っ!
「ど、どうした?」
「ドコ、イクノ?」
俺はカタコトな言い方に息を飲んだ。
「注文聞きに」
「ナンデ?」
「それは」
「私の、好み、理解、して、くれてるん、だよね?」
「あ、うん」
「なら私のことも理解してるよね、ヨネ?」
今日の一葉はまた昨日とは一変……というかし過ぎて怖い。
何か変なものでも食べてきたのか?それともオムライスに何か入ってた…なら他の人もこうなってる筈だ。
だとすると、これは昨日に続いて一葉キャラ変と考えるべきなのか。
「文くんは私のだけを作ってくれないとダメ、私の声だけを聞いてないとダメ、私だけを視界に入れないとダメ、他は赦さない許さないよ」
ああ、これはあれだ。今日はヤンデレちゃんなんだ。クーデレからヤンデレって豹変しすぎだろ!怖いわ!
とりあえず、目配せで紅葉さんに注文を頼んおこう。
「だからダメだよ。私だけに視線向けてないと、めっ!」
メッ……だと。やばい可愛い。
どうしようヤンデレ怖いと思っていたのに、今ので可愛いに逆転しそう。
怖いけど。
「分かったよ」
仕方ない。少しの間、紅葉さんに接客頑張ってもらおう。
この借りはいつか精神的に返しますんで。
「文くん座って」
ぽんぽんと右隣の椅子を叩く一葉のご命令に俺は従う。
「それにしても今日も一葉は…可愛いな」
「嬉しい!ありがとう文くん。ちなみにどういう所が可愛い?」
「制服姿が制服デートに行きたくなるくらい可愛い」
「うんうんそれで」
「えっと、行き倒れて弱って甘えてくる所がか、可愛い」
「それで?」
「他には?」
「俺の作った料理を美味しく食べる姿が可愛い」
「後は?」
「え」
「後は?ねぇ後は?それだけ?可愛いっていうのは嘘なの?」
一葉が怖い。瞳のハイライトが無くなってる。でもコテンと首を傾げる姿は可愛い。
俺は心の内を言わされて恥ずかしい。何の拷問だよこれは!
理性よ、俺の理性よ、負けるな。
「一葉、なるべく店は回したいからヤンデレは終わってくれ。あと食べ終わった後の笑顔が可愛いくて好きだ」
「おっふ…し、仕方にゃいヤンデレは止めてしんぜよう」
「はっ、ありがたき幸せ」
「うむ」
ふぅ、とりあえず一葉には二度とヤンデレをやってほしくないもんだな。
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