第22話現在の行き倒れ美少女《一葉視点》

 2020.8.28 最後辺りの心情を修正しました。

 ――――――――――――――――――――

 だぼだぼの転校先の制服を着た。


 胸がきつ…サイズが少し合わなかった。


 家族全員驚いてたみたい。

 でも、一番驚いてるのは私自身。


 みたいって言うのは顔を見てないから。

 やっぱり顔、合わせづらい。

 だから昨日、怒られたけどお母さんの顔は見てないんだ。声は普段から聞いてるから問題ないかな。


 引きこもりの初登校はお母さんが送ってくれた。それも校内の来客用入り口前まで車で。


 職員室まで一緒に着いてくれるって言ってくれたけど、昨日なんで平気だったのか確かめるためにも断った。


 職員室に着いた私は扉前でマネキンみたいに固まり、入れたのは職員室を出ようとした女性の先生の人がいたから。

 先生が出てきた瞬間、

 無理、帰りたい、今すぐ帰りたい。部屋にこもりたいって一瞬でKOされた。


 でも、その人は丁度担当の先生で顔も事情も知ってたみたいでラッキーだった。

 結局何も言えず、立ちっぱなしになったけど。


 辛い戦いだった。ショートホームルーム前だから廊下には誰もいなかったけど、教室に入ればいる。


 その恐怖、モンスター達に身震いが絶えないまま、自己紹介した。すぐ帰るのはどうかと思ったから一時間目受けた。そしたら休み時間中は転校生定番の質問攻め、途中顔色悪いと言われて保健室に避難した。

 実際悪かった。限界だった。


 一時間目でダウン。お母さんに迎えに来てもらって部屋に帰還した。


 でもお陰で、何故かわからないけど、文くんだから大丈夫だって分かった。


 その放課後。

 学校帰りを装って喫茶店に向かった。

 食欲無くて食べてなかったからまた行き倒れて、文くんにお姫様抱っこされて、店内に運ばれた。

 昨日も私運ばれたみたいで、恥ずかしさ誤魔化すので精一杯だった。


 ナポリタンを作ってくれたんだけど、それは文くん自身の賄い用だった。

 出てきたとき嬉しかったよ、美味しかったよ。

 でも、譲ったら自分の無くなるのに何やってるのってぽかぽか殴った。


 この時、周りに人が大勢いるのに私は普通に文くんとやり取りできてたことに気づいてなかった。

 だって、「俺は一葉が美味しそうに食ってくれたから別に良かったと思ってる。だから後悔しないで欲しいんだよ」とか言うのんだよ。反論なんてどうでもよくなる満面な笑みを添えて。

 誰だってニヤけちゃうよね?


 昨日行き倒れてる所を助けて、料理まで作ってくれて、家まで送ってくれて、今日は自分の賄いナポリタンを私に作ってくれて、ラノベ主人公なのってくらい優し過ぎ。


 危うく惚れるところだった。一瞬堪らずにぎゅぅぅって文くんを抱き締めたくなった。

 惚れたらダメ。関わったら文くんに迷惑をかけるもん。

 でも、この安心感からは離れられないってのも確信しちゃった。


 えへへ。


 恥ずかしさを誤魔化しながら話していると文くんが話題を変えて私の制服に着いて質問した。


 私は疑問に思った。何で文くん今嘘をついたのかなって。

 保健室に向かうときに、文くんが窓から外を眺めてたの。

 でも、同じ学校なのを知られたくないのは何か理由があるのかなって思って私は話に乗った。


 帰る直前、同じ二年生だって言ったから、多分明日にでも見に来るかもと思って、次の日頑張って登校した。


 予想通り文くんは一時間目の休み時間に様子を見に来た。

 ミッションクリアした私は即帰還。

 流石に二日連続はもう限界。


 燃え尽きたよ……真っ白に。流石に灰にはならなかったけど。


 それから放課後の時間帯になるまでだらだら過ごして、お礼をするためにメイド服で喫茶店行った。


 恥じゅい。


 それから、文くんに会いに喫茶店に行くとき以外は引きこもり生活に戻った。

 勿論、喫茶店に行くときは登校装って、制服を着てだよ。

 それが一週間くらい続いたかな。


 その度に行き倒れてお姫様抱っこ、一回だけおぶられた。

 部屋に出るだけでもきついから精神的、肉体的に体力を消費しちゃうんだと思う。


 だから文くんは私の体が異常に冷たいのを気づいてると思う。でも、聞くそぶりがない。

 ホッと安心するのに、心苦しく感じる私がいた。


 ズルいなぁ文くんは。


 大体文くんとお話すだけなんだけど楽しい。

 文くんのお母さんがパンを扱うレストランから指名が殺到するほど凄い腕の人とか、喫茶店の本が実は文くん家の私物とか……文くんと親友になったこと、全部楽しい。


 仕方なくだよ!本当はダメだけど、会話の流れで文くんがぼっちだって分かったから…仕方なく親友に、えへへ。


 ハッ!


 そんな事があって文くんの家にお泊まりすることになったんだよ。


 無理にやらなくてもいいと思ったんだけど、喫茶店の手伝いをした。

 昼休憩終わった後はお客さんも少なくて注文も無かったから、助かった。


 本当、だったらやるなって話だよね、あはは。


 でも、私にとって文くんが助けてくれたことはとても大きくなってて、いることが楽しくて、安心感が救いになってるんだよねこれが。

 外に出たくない、引きこもっていたいのに文くんのいる喫茶店に行く時だけは怖さが和らぐ気がするの。


 お手伝いが終わった後、文くんの家に上がった。

 一緒にピザ作ったんだ。凄いんだよ、文くんの家、レンガ釜があるんだもん。

 文くん、めちゃくちゃピザ好きみたいでピザ談義が止まらなかったよ。


 その後は文くんの部屋にお招かれて、まねかれて……とある対価の抱き締めタイムで抱き締められた。

 ぎゅぅぅってされてるのに優しく抱き締めるからめちゃくちゃ頭が文くんで満たされそうだった。

 文くん惚れてないよね?私に惚れちゃったりしてないよね。


「はい、文くん終わり、離れて」


 途中で打ち切った。満足してない感じだったけど、私は言わなくちゃいけなかった、


「そういうワガママは彼女に聞いてもらう」


 私はあくまで文くんと親友。

 この言葉は私に対して、文くんに対しての楔。

 対価と言いながら、ぎゅってしてって遠回しにおねだりしたから、もしかしたら、私の気持ちに気づいててもおかしくないけど。大丈夫だよね?きっと。


 そのあと、一緒に動画で映画鑑賞、文くんの部屋にある漫画、ラノベを読んでる途中、同じ学校にいるのを教えてくれた。


 理由は平和に過ごしたいからっていう可愛いものだった。

 文くんはちっぽけとか言ってたけど。


 最後は1日越すまでゲームプレイしたり楽しかった。

 日曜日はお昼直前までお手伝いしてお泊まりは終わった。

 家族がいるのに寂しくなった。


 それから二日後に久しぶりに学校に行った。でも、昼休みだけ。

 理由は文くんに学校案内をしてもらうことになったから。


 学校案内だけでもずっと隣にいた文くんのお陰で怖いのに大丈夫だって、強く思えた。


 たった一人なのに、こんなにも安心をくれる人を私は手放したくないって願ってしまった。


 まだ思いは言えない。勇気がまだない。


 文くんにまで手が伸びて被害を受けたらと思うと怖い。

 学校にはもう行けないかも。


 だから、文くんにいつか勇気を伝えられるようにワガママだと思うけど、唯一自分の足で行ける喫茶店に毎日行くことにした。


 少しだけ、少しだけ私を預けても大丈夫だよね。

 ――――――――――――――――――――

 どうも翔丸です。


 これで一葉視点(幕間)は一旦終了です。

















  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る