第20話引っ越す前の行き倒れ美少女〜引きこもり編〜《一葉視点》
「一葉、昼食扉の前に置いておくからね」
カチャンという音が部屋の外からした。
一分くらい経ってから扉を少し開けて近くに誰もいないことを確認してから昼食を部屋の中に入れた。
今日は温野菜サラダ(大盛)、唐揚げ(大盛)、白ご飯(中盛)、味噌汁(並)。
「いただきます」
唐揚げはニンニクとショウガが良く効いて、
味噌汁は昆布と鰹の合わせの出汁良く出てて油揚げと豆腐に良く染みてて、どれも美味しかった。
空になった食器とトレーを外に置いて私はベッドに寝転がりニンテングースイッチを起動させてゲームに鼻唄交じりで勤しんだ。
「ふ〜ふふん〜、ふ〜ふふふん〜♪」
私が引きこもるようになってから半年。
最初、私は飢えた。それは物凄く。
心を楽にしたい紛らわしたい衝動がそうさせただと思う。でも3日間は無飲食で布団の中にいた。
次の日は無飲食でゲームをしてた。好きで楽しかった。
この時はそれだけじゃない、多分……絶対そう。
没頭するほどに楽しいし、けど、苦しくて本気で楽しめなかった。
何が足りない気がした。
それを求めるように空腹に限界がきた。。
何か欲しくてこっそりと何か持ち出そうと思って扉を開けたら扉前に料理の乗ったトレーがあった。
多分、毎日毎食置いてくれていたと思う。
そこに『食べ終わったら外に出しておいて』とメモがあった。
「ありがとうお母さん……いただきます」
私は食べた。
でも、満たされなかった。
量が足りない?
そう思って、私は食べ終えて空になった食器類を『量を多めにしてくれませんか』っていうメモと一緒にトレーに乗せて外に出した。
この時から私は、時折部屋のなかで、行き倒れるという珍妙な技を覚えた。
結果一般的な並盛が私の場合は大盛=並盛になった。
それからの日々はゲームやり放題、1日でレベルは上がるわ、
その間、明ちゃんとは会ってはいない。会いに来てくれてはいたけど、帰ってもらってた。それに中に入れても要らない期待をさせるだけだから。
それが一週間かな。前日晩ごはんを食べ終わって部屋の外に食器類を出すときに、『明日、明ちゃんが来たら扉の前に呼んでほしいです』っていうメッセージを書いた。
翌日、来てくれた明ちゃんに私は言った。
「もう二度と来ないで」って
それ以降、明ちゃんは家に来ることはなかった。ごめんね、私は内心でそう呟いた。
引きこもりから7ヶ月。
季節は春で学校も1ヶ月がたった頃、私はすっかり自宅警備員として花咲かせてるんだぜ。
「…くぅぅぅ育てが足らぬか、でも、召喚されたばかりだし、曜日周回は明日…イベント来ないかなぁ。復活で良いから、とにかく素材がほしいよぉ…いや、時間はたっぷりとあるのだ。集められる素材を集めよ、マスター一葉よぉ」
「一葉良い?」
少し申し訳なさそうな暗い声で話し掛けるのはお母さん。
私はビクッと怯える体を布団に包んだ状態にした。
「な…に」
「あのね。引っ越しようと思うの。それで一葉の意見を聞きたくて」
これは私を思っての事。一瞬で理解できた。
でも、助けなんていらない。
環境が変わったところでアニメや漫画みたいに救いなんてものは最後まで続かない。
私はそれをよく知ってる。
私を知ってる場所とは違う、誰も私を知らない場所に行って改めて刻み込まれた。
お陰で今、毎日楽しく過ごしておりますけどね。
だから、どっちでも良かった。
部屋でだらだらのんびり過ごすだけだから。
「好きにしていいよ」
後日、引っ越しが決まり、それに応じて私と妹の転校手続きがされた。
私の場合、引きこもってる事情を話したらそこの学校長が転校を了承したみたい。
そうして、私は引っ越す事になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます