第12話いらっしゃいませ。行き倒れ美少女と…泊まり!?夜・お泊まり編その4
前話で最後、肩を乗せてるのにそっぽを向いた描写を加筆修正しました。
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「そうだ、次は対価を貰うからね」
「ズルいとは思うけど、今まで対価に値することをしたと思うけど」
メイド接客と抱き締めてしまったのを引けばまだ今日のとで5回分あるはず。ズルいけど。
「それなら今日使いきったじゃん」
「何…だと…!?」
あり得ないと驚愕する俺を一葉は「ふっ」と微笑する。
「先ず、セクハラ発言取消と匂いクンクンで二回、密着一回、お泊まり一回」
「密着とお泊まりが含まれるだと、馬鹿な!?」
「ふふふ。文くん、呪うなら、君の浅はかな行動を呪うのだな」
「一葉!謀ったな一葉ァァァァ!」
「やっぱり文くんノリ良い!!」
「な、抱きつくとこっちも対価もらうぞ」
「文くんが私から対価もらえると思っておるか。否、寧ろ抱きつかれた文くんが払うべきなのだ」
ニヤニヤと笑みを浮かべて楽しんやがる。
なんとも勝手でガードの固い。でも抱きついている所は緩そうに感じる。
だが、一葉は気付いていない。
ここからは俺のターン!
俺は抱き締める一葉を抱き締め返した。
ふわりとシャンプーの香りが漂ったが我慢した。
「ひゃ!文くん…いきなり、何ゆえ、だ、抱きついてるの!?対価貰うよ対価」
「いや、対価は既に払っている」
「しょ、しょんなはずない、ちゃんと4回…」
抱き締めていて表情が見えないのは悔しいが、動揺している。
親友に今何をやっているのかと自覚はあるが、やり返そうと思った瞬間真っ先に浮かんでしまった。
「4回〜?何を言っておるのかね?今日の一回があるではないか」
「しまった!」
「…言質は取った」
顔見えてなくて良かった、めちゃくちゃ熱い。心音が伝わってないよな。
一度、深呼吸。
「………じゃあ……するんだったらもっと抱き締めて」
「……」
マママ、マジですかぁ!?さっきまでガード固くしてた一葉さんが突然素直に……なった?
でも、そうか、メイドで来たときも抱き締め良いと言われた。
その時もお礼での対価だったわけだから今の言葉も納得だ。
「あと、抱き締めるなら、満足するまで止めちゃダメだよ……あとあと」
「ん?」
「壊すくらいの気持ちで……」
「…どうしよう理性飛びそう」
「そ、それは我慢して!」
「…全力で頑張ろう。しかし、一葉が可愛いから悪い」
「…良いからもうやって」
俺は消滅しそうな理性を保ちながら一葉を更にぎゅっと抱き締めた。
そうしたら高鳴ってる胸が更に高鳴ると思ってた。
幸福感がヤバい、でもそれよりも、安心感が俺を包み込む。
相手が美少女なのに。
「はい、文くん終わり、離れて」
安心感とハグに浸っているとぽんぽんと肩を叩いて、一葉は優しい声色で言った。
「満足してないんだが」
冗談でそう言ってみると一葉は少し呆れた表情で「もう、文くん」と言ってから、
「そういうワガママは彼女に聞いてもらう」
確かにその通りだ、彼女いないけど。
一葉は友達で、ただの親友だ。
……そうだ、親友だ。
「そうだな……やった事が照れくさくなってきた」
「それ私のセリフだよぉ!!」
ほら見て、と指差す顔が真っ赤だった。
…やり返したい気持ちが先行してたんだよ。
可愛いから。
「あ、忘れてた。文くんお風呂」
「そうだった。におったよな、ごめん」
「ピザの匂いで美味しそうだったよぉ」
「出たな食欲の女王、食うなよ俺を」
「ふっふっふ、ピザは断面側から食べると最後まで味合えるんだよ」
「まさか小腹空いたりとか」
「やだなぁ、あるわけな『きゅるるる』………えへへ、あったよ」
照れくさくなり一葉は後頭部をさすって誤魔化す。
やっぱり腹に猛獣を飼ってやがる。
「じゃあ、お風呂行く前にお菓子いくつか持ってくるよ」
「文くん、ありがとう」
俺は泣き付いてきた一葉の頭をぽんぽんと軽く叩く。
「じゃあ、お菓子持ってくるから適当に寛いでおいてくれ」
「りょ」
俺は一階に下りお菓子を部屋に持っていって、また一階に下りてお風呂場に行き、風呂で30分程浸かり今日の疲れを取って部屋に向かった。
部屋前に到着して扉を開けると、左奥側の端にベッド、右側に端っこ奥から勉強机、タンス、本棚が並んでいて、真ん中にテーブル、下にカーペットがある。
そして、一葉は本棚から漫画を取ってベッドの上に寝転び、ネコさんパジャマでネコ足と化している足をパタパタさせながら読んでいた。
家に居着いたネコみたいだ。
「動画観てないのか?」
「お帰り文くん。せっかく友達の家に泊まりに来たんだから一緒に見ないとねぇ」
「じゃあ早速見るか。そういえば何見るかまだ決まってないな」
ベッドから下りて一葉はタブレットを置いた真正面に座るよう再び促す。俺が促されるまま座ると一葉は隣に座った。ただ、距離が少し離れている。
「警戒厳重だな」
「当たり前だよ。あぁあー、肩乗せるの心地好かったのになぁ」
一葉は隣で態とらしく声をあげる。
「それはわるい」
「わるいと思ってる?」
「実はもっと抱き締めたかった!」
「……もう、文くんのバカ」
タブレットを手に持ち赤面したまま、画面を操作して観るものを探し始めた。
「文くん、放送に備えてお兄様を観明かします」
「入学編からか?」
「勿論です。お兄様の勇姿を再度目に焼き付けるのです」
「分かった。付き合おう一葉」
とまあ劣等生風やり取りのあと、結局一葉は「画面が小さくて見えないぃ」と言って密着し、肩に頭を乗せて動画を観始めた。
まさか、再び密着してくると思ってなくて、抗議団体なり、魔法競技なり、その中で裏工作されているなどで、こんなシーンだったよねぇと色々一葉が語っていたが、頭に一切入ってこなかった。
1クール見終わる前には既に俺は精神ぐったりだった。
2クール見終わって一葉はのびをし、俺は全身の力を抜いてぐったり。
「兄妹揃って最強だよねぇ」
「原作で先を読んで隠された真実知ったときは驚いたぁ」
「あー、まさかだったよねぇ。今はスピンオフだっけ?」
「まだなのか?」
「気になったラノベをつい取っちゃってぇ。でも奪還はあるよ」
「スピンオフあるぞ。読む?」
「読む読むぅ」
俺と一葉は共に腑抜けた口調になってた。
「ほい」
「ありがぁとう」
一葉はラノベを手渡されるとベッドの上で読み始めた。すっかり居着いたネコになったな。
「文くんはラノベのジャンルは何が好き?やっぱりファンタジー?」
「だな。今、スライム系に嵌まってるかな」
「今では可愛いよねぇ。そういえば変スラ二期やるよね」
「やるなぁ」
何て話をしてたら読みたくなってきたので、本棚から『変身したらスライムになってしまった件』通称『変スラ』の単行本サイズのラノベを取って読み進めた。
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