第11話いらっしゃいませ。行き倒れ美少女と…お泊まり!?夜・お泊まり編その3
さて、一葉のとんでも発言から親父があっさり承諾して決まった宿泊。
俺は自分の部屋の片付けをしてる。
言っても散らかってるの整頓して、布団を用意してるだけだが。
ちなみに一葉は入浴中。
先に入って問答が繰り広げられたが最終的にじゃんけんで俺が勝ち、一葉が先に入る事になった。
でも、着替えとか諸々無いから、どうするのか聞いたら「ノープロ」って何でだ?
「文くん、入るよ」
窺うようにひょこっと顔を少し出しながら入ってきた。
しかも、黒ネコさんパジャマと可愛い姿でだ。ただ、体つきが諸に出てしまいエロ可愛いと付け加えるべきかもしれん。
「文くんちょっとだけえっちぃ」
「正直に申すとエロ可愛い…うん、そうやって腕で隠そうとする仕草すら」
「正直なるなぁ!」
その瞬間、俺の顔面に白いもふもふが突撃してきた。
「ふぐっ!え?何だ、このもふもふ?」
「私のマイフェイバリット『癒しのアイドルもふうさちゃん』だよ」
それなら知ってる。世界一のアイドル目指して活動しながら喫茶店で癒し系看板マスコットして頑張るウサギだったな。
そのフェイバリットの小さなつぶらな瞳のまん丸うさぎで口を塞ごうと押し付けられて俺は窒素しそうなんですけど。
フェイバリットなの疑うぞ。
それと何でそれがあるの?そのパジャマは何?
「とりあえず、一葉、息…できないから、離してくれ」
「文くんが二度と言わないと約束するなら解放してしん是よう」
「するする……ち、仕方ない」
「はいギルティ!ギルティだよ、このまま癒されるが良い!」
一葉はもふうさのぬいぐるみをぐりぐり一層押し付けてくる。
顔を真っ赤にして。
「ふはっ!…もふもふは気持ちいいけど、ぐりぐりとされたら癒しもない」
「ならば盟約せよ。Eキュートと呼ぶべからず」
「E?ああ、エ…」
「言うなバカァァァァァァ!!」
「だぁ、もふうさを振り回すなぁ!?」
俺はぬいぐるみを振り回す一葉の手首を封じた。無理矢理振り払おうと暴れる一葉は息を荒くしている。
「フーッ、ナラ…コトバ…キンシ…ヤメロ」
今度はバーサーカーかよ。
「分かった。分かったから狂化を解除して親友を付与してくれ」
「ホントカ?」
「する。します。二度と『可愛い』と『E』は言わないから」
「『E』ワードだけで…イイ…ヨ」
今一瞬バーサーカーが解けたな。
可愛いは良いのか。それがまた可愛い。
「ゴホン…イイ…ダロ…ヘヤ、イッタン…デル…モドル」
付与を解くのに出る必要があるのか疑問だけど、出ないと戻ってくれないようなので、俺は素直に従って一旦部屋を退室した。
俺の部屋なのに。
それにしても、俺の親友にとって、あれは禁句の言葉だったらしい。いや、なったかな?
さて、それはそうと、どう戻れば良いのだろう。
「よ、一葉。Hello,my friend。ボンソワール」
どれも違うな、絶対。
………もう普通でいいよな。
「一葉、入るぞ」
窺うように見てみると、扉の方を向いて、背筋をピンとして見事な正座をしていた。
「どうも文くん。親友の一葉です」
「これはどうもご丁寧に。親友の文です」
「何これ?」
「それ俺のセリフだよ」
「えへへ。文くん動画見よ」
そう言って朝、来たときには持ってなかった白のリュックからタブレットを取り出した。
「一葉、そんなリュック持ってたか?」
「ううん、妹に持ってきてもらった」
「へぇ、妹いるんだ」
「フッフッフッ。今、私のアカシックレコードの一ページが明かされた。そう、文くんの親友美少女、一葉ちゃんには妹がいるのでした。びっくりだね☆」
一葉は横ピースを決める。
うん、一葉の行動もいきなり過ぎてびっくりだよ。
「ちなみにどんな子何だ?」
「しっかり者で、シスコンで、あと私みたく美少女だよ」
しっかり者なのは天真爛漫な感じの一葉見てて納得だわ。シスコンも、大好きじゃないとわざわざ持ってこないから納得。
美少女は言わなくても分かるだろ。
「準備したのは良いんだけどね、お店来る前まで寝惚けてて部屋に置きっぱにしたままだったんだよ」
「あー」
「で、控え室で着替え中にスマホでメッセ送って、お風呂場に行く時に文くんのお父さんが丁度持ってきてくれたんだよ」
大丈夫だよな。
実際のところ分からないけど、シスコンって姉の友達が男なら警戒心剥き出しにして
「お姉ちゃんを行かせるわけには、いかない!」とか言いそうなイメージがあるけど。
「大丈夫だよ。文くんの下の名前で女の子って勘違いしてるから。もし来たら誤魔化せば面倒な事にならないよ」
「心読むな。しかもさらっと恐ろしい事言うな」
「いやぁ〜♪」
「誉めてないぞ」
「それより動画見よ見よ」
一葉はタブレットと専用台をテーブルの置き、「はよはよ」とタブレットの真正面に座るよう叩いて促す。
俺はテーブル側のベッドに腰を預けて座る。
「これ、真正面だと一葉見れないよな」
「そこは安心せよ」
すると、一葉は隣に座った。しかも完全に密着して頭を俺の肩に預けてだ。
パジャマ越しでももちもちとした感触が伝わる。
「あの〜一葉さんや、これは恋人がやるような体勢ではないかね?」
「チッチッチッ。文さんや、それは彼女が彼氏の前に座って背中を預けるもんだよ」
「いやいや、それもだけど、これ間違いなく恋人のだろ」
「彼氏椅子は抱き締められても良い程に許します。隣は安心してるけど警戒してるよ」
「俺警戒されてるの?」
一葉は頭を肩から起こして、ニコっと微笑みかける。
その瞬間背筋がゾクッとした。
「前に公衆の面前で抱き締めたのはどこの誰かな?かな?」
「すいません、犯人ここにいます」
「うむ、よろしい。では、私の頭を預ける権利を正式に与えましょう」
一葉は再び肩に頭を預けた。
ああ、シャンプーの良い香り。でも、知らない香りだ。
「文くん、今頭を預けてるの良い事にクンクンした?」
「偶然だぞ!?」
「でもしたんじゃん……その…意識はしちゃった?」
「したいとは…!…ちょっとでもしてない」
「……ヘタレ」
一葉は肩に頭を乗せたままプイッとそっぽを向いた。
意識して匂いかいだらさっきみたいに怒るん迄に至るんじゃないのと思って動いた際に漂った香りに反応しないよう堪えたのにヘタレと言われた。結構ショックだったり。
結論。
親友はまだまだ名称で、称号としては難しいようだ。
――――――――――――――――――――
どうも翔丸です。
まだ少しお泊まり会が続きます。
お付き合いいただけたらと思います。
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