第2話 いらっしゃいませ。行き倒れ美少女は今日も行き倒れ
俺は学校を終えて普段通り家の喫茶店で働いている。
「お兄さーん。注文良いですか?」
「はい、少々お待ち下さい」
それにしても昨日の朝は凄かった。1日終わったんじゃねぇかってオーバーな感覚を味わった。
無事に一葉の家に到着したんだが、玄関から出てきた母親?お姉さん?に頭を一発殴られた。
そのあと「家のバカ娘がご迷惑おかけしました」と言われて母親だと分かった。
これが凄い美人で母親に見えなかった。
まあでも、一葉も美少女だし、納得した。
で、一葉を無事送れた俺は急いで店に戻った。途中何か言ってた気がするんだけど、急いでてよく聞いてない。
後から着いてくる事無かったし、多分、ありがとうとかそんなとこだろう。
何とか俺も猛ダッシュしたことで開店15分オーバーだったけど、徒歩30分距離を半分で戻ることができ、無事に仕事も出来て万々歳。
「すいませーん。お会計お願いします!」
「畏まりました」
俺はレジに向かい会計を済ませて、お客様二人に笑顔を向けた。
「また読みに来ますね」
「料理美味しかったです」
満足そうな表情で女性客二人が嬉しい言葉を言ってくれた。
「こちらこそありがとうございます。そう言っていただけて良かったです。またのお越しをお待ちしてます」
『Natume's Cafe』は本が多種多様にあることで評判だが、料理も美味しくそれでいてオシャレで、後、いつの間にか映えるという事でも人気は上々。
そして、今日も放課後ながら大繁盛だ。
「きゃあああ!!」
さっき会計を済ませた女性客の声だ。何事かと俺は直ぐに扉を開けた。
すると、今日もまた路上で行き倒れ美少女がいた。今日は制服だった。しかも、滅茶苦茶見覚えあるんだけど。
と、それより。
「あのぉ一葉さーん。何でまた行き倒れるんですか」
「そ、その声はふ、文くん…お、お腹が…空っぽ」
「またかよ。つーか…今日は流石に食ったよな」
「…食べた…でも空いた」
大食らいか!なら、そのシュッとしたスタイルは一体どう維持してるんだ?
謎だ。
あ、そうだ。
「お客様、申し訳ありません。こちらの行き倒れは気にしなくても大丈夫だと思いますのでお気を付けてお帰りください」
「昨日今日で文くん扱い雑!」
「うるさい!食わせてやるから、さっさと行くぞ」
「へ?良いの?」
「用あってきたんだろ。それに店の前の路上で行き倒れられたら迷惑だし」
「酷!?でも正論で『きゅるるる〜』…お腹空いた」
一葉は腹の虫を鳴らしてぐったりとなった。これは動けなさそうだな。
となると、またお姫様抱っこか。
「運んでいくからな」
「うん、おねがいきゃ!ふ、文くん!?」
「どうした?お姫様抱っこなら昨日もしただろ?」
「昨日!?私を抱えて何処にさらっていったの?」
「よし、そんな元気あるなら大丈夫か」
「すいません。体力を絞りに絞り出してるので助けて」
「ったく、大人しくしてろよ」
そう言うと一葉は急に汐らしくコクンと頷いて大人しく喫茶店のカウンター席に運ばれた。
「親父、キッチン借りる」
「畏まり」
俺と一葉を交互に見て、親父は顔をニヤニヤさせていたが無視して俺はナポリタンを作り始めた。
「ほい、ナポリタン。最後の一皿だから味わって食えよ」
「おぉ!私ラッキー!いただっきー」
なんだよそれ。
そして、一葉はまた黙々とナポリタンを口に運んでいく。
本当に美味そうに食いやがる。また作って良かったって俺も嬉しくなる。
「ごちそうさま!」
昨日と同じで手を合わせてのごちそうさまと満面の笑顔だ。
「お粗末様」
「……文くん」
「何だ?」
「昨日もだけど、文くんのナポリタンお粗末じゃないよ」
突然の真剣な表情に不意を突かれた俺は一葉の言葉と表情にドキッとした。
「あ、ありがとうな。でも、今日のは本当にお粗末だからな。だって…!」
俺はやばっと、そこで言葉を切った。
でも、逆に一葉に気にかけさせてしまったようだ。
「何言いかけたの?」
「いや、別に」
「『だって』って、はっきり聞いたぞ」
どうする。多分観念するまで諦めない、そんな気がする。昨日も途中までそうだったし。
どうする、何かで誤魔化すか?
「すいませーん」
よし、ナイスタイミングです、お客様!
「ただいま参ります…悪いな一葉」
「逃げるのか、ル○ン」
「とっつぁん、またなぁ」
ご機嫌ナナメだよという風に一葉はぷくぅと頬を膨らまして膨れっ面になるが、お客様対応という大事な時間が出来たお陰で何とか回避出来た俺はお客様の元の注文を取りに向かう。
さて、戻った時の言い訳どうするか。
「あ、夏目くん。注文私が取って上げるからその子の相手してて良いよ」
「な!?」
そう言ったのは家でバイトしている
大学の二回生で高校生の時から入ってくれている人で、今では一応看板娘的な存在だ。
しかし、今気遣いはいらないですよ衣畑さん!とは既に注文を取り始めていて言えなかった。
特に回収する皿もなく、俺はキッチンに戻る事になった。
「ふふふ、もう、逃げ場はない。観念するが良い、ル○ン」
ビシッと指をさして微笑を浮かべる一葉。
まだ続いてのか、そのネタ。
「…分かったよ」
「正義は最後には必ず勝つ!」
一葉はブイサインを向けてドヤ顔を決める。てか、誰が悪だ誰が。
「じゃあ話して」
「いきなり真剣だな…まあ、大したことじゃない。…お粗末っていうのはさっき使った食材が不揃いなやつでな。ばらつきがあると味が不安定になるからお客様に出せないやつを使ったんだよ」
「んん?ねぇ、それって最後の一皿じゃないよね?」
「まあ…そうだな」
「だよね。それで文くん…何で目が泳いでるの?」
「ジブンデハワカラナイナー?」
本当は滅茶苦茶目が泳いでる。
それを利用して一葉をチラチラと見ると凄いジト目で俺を見ていた。
「賄い」
「うっ」
しまった!つい声を漏らしちまった。
「もう、文くんのバカ、アホ!何で自分の賄い用を譲るの!」
と言いながら一葉は体を前に乗り出し、涙目で俺をポカポカと殴る。
その様子をお客も含めて何故か微笑ましそうに見てくる。
「一葉さん、そろそろ殴るの止めてくれませんか」
「悪いって思ってるなら止めてあげなくもなくもない」
「どっちだよ!あと、俺は悪いとは思ってない。一葉、ナポリタン美味しかったろ」
「…うん」
「なら良い。俺は一葉が美味しそうに食ってくれたから別に良かったと思ってる。だから後悔しないで欲しいんだよ」
すると、一葉は身を引っ込めて突然顔を真っ赤にして俯き席に着いた。しかも可愛い。
堂々と宣言した俺はそんな恥ずかしい事言ったのかと理解ができず、親父に目線を送ると、「文もやるな」とよく分からん返しをされた。
「フッ。こ、これでお互い一勝一敗だだね」
凄い動揺してる事を懸命に隠そうと平然を装いながら俺に話しかける。
全然装えて無いけど。顔は真っ赤なままだし、目は泳ぎまくりだし。
こんなこと言ったら茹で上がりそうだな。
このままじゃ、まともに話できなさそうだし、話題変えるか。ずっと気になってる事もあることだし。
「水飲むか」
「せ、聖なる水で私を浄化するつもりか!」
「お前は正義側に立ってたんじゃないのか」
「い、今はダークヒーローの時代なのだよ」
「ダークヒーローでも水分補給は大事だろ」
「うむ。そうだな…感謝する文くん」
水を受け取ると、腰に手を当て飲んでいく。牛乳ビンじゃねぇからな、透明なガラスコップだからな、それ。
「で、一葉、今着てるの転校先の学校制服か?」
「そうだよ……どう?」
一葉は恥じらいながら席を立って制服を見せる。
どう?って似合ってるって聞いてるんだよな。ブレザーしか見えないけど、それ、俺の通ってる高校のなんだよ。
そう言えば、二年に凄い美少女が転校してきたって今日その話題で持ちきりだったな。
「ブレザーしか見えないぞ」
「じゃあちょっと下がるね」
一葉は周囲の席のお客さんに気を付けながら下がっていき、全体が見えたので止まってもらった。
ブレザーの下は赤のプリーツスカートだった。結果は俺の通ってる学校でした。
やっぱりお前だったのね転校生。
「それでどうかな文くん」
席に戻った一葉に俺は感想を口にした。
「可愛いと思う。いや、可愛いな」
そう言って俺は強調されているある部分をチラ見してしまった。
「あ、ありがとう。でも…文くんえっちぃ、今胸見たよね」
「し、仕方ないだろ。そう…強調されてると…」
今にもブレザーのボタンが外れるんじゃないかくらいにたわわが強調なされてる。
ここで、正直に白状すると可愛いけどエロい、だ。
「こ、これでも大きい方なんだよ!只これ以上サイズ上にすると、袖がだぼだほになっちゃうんだもん」
「そ、そうなのか」
腕を上下に振るな!たわわさんがたゆんたゆん揺れていらっしゃるから。
そして、親父はチラチラ見るな。ちゃんと料理しろ!!
願いが通じたのか腕を振ることを一葉は止め、揺れが止まった。
「あ、私そろそろ帰らないと」
「ああ、ちょっと待った!」
「どったの?文くん?」
振り向き様の『どったの?』めちゃんこ可愛いな、じゃなくて!
「一葉、昨日の『対等な立場なんだから』、あれってどういう意味だ?」
「あぁ、あれ。文くん自己紹介で高校二年生って言ったでしょ。私も高二だから」
完全証明完了。真実は一つになった。
「じゃあね、文くん」
「お、おう」
そして、一葉は帰って行った。
そう言えば、一葉の用って何だっただろうか。
――――――――――――――――――――
どうも翔丸です。
いやぁ書いちゃいました。あはは。
以上です(☆ゝ`ω・)
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