行き倒れ美少女は助けられてから(家業の)喫茶店に毎日来るようになった(しかも、転校生らしい)
翔丸
第1話 いらっしゃいませ。行き倒れ美少女
俺の家は【Natume's Cafe】という書籍喫茶をやっている。
営業は朝の8時から夜の7時まで。
書籍喫茶っていうのは、店内で小説、漫画、写真集(絶景・自然)を軽食取ったりしながら読める場所だ。漫画喫茶みたいなものだと思ってくれ。
あと、他に幼い子ども用の児童本もある。
まだ幼くて目を離せないという親も来店できるようにと思ってだ。
因みに俺の発案。
ジャンルが多様にあって、個々の種類はそんなに無いと思ってしまうだろうけど、それが意外とあるんだよ。
お陰様でいろんなお客様が来てくれて繁盛している。
そして、今日も朝からの開店の為、準備をした。
五分くらいで終えて、最後に換気をしようとシャッターを開けてカランカランというベルの音を鳴らしながら扉を開けた。
「う…ぅぅ」
「……なんだあれ?」
店の前の路上に女子が一人倒れていた。
おお!そうだ。思わず変なツッコミをしてしまったが路上で倒れてるんだ。
女子を仰向けにすると滅茶苦茶美少女だった。
長い睫毛とサラサラしたセミロングは綺麗な栗色で白い肌は雪みたいだ。顔立ちもパリコレレベルのモデル並みに整ってる。でも、少し幼さがあって可愛さもある。
服は白のフリルシャツに黒のスカートとシンプルだからこそよりその美少女さが理解できる。
って、そんなことより。
「大丈夫か!?声、聞こえるか?」
先ずは意識を確かめた。
「う…ぅぅ」
苦しいのか呻いてる。救急車を読んだ方が良いかと思ったら何か呟き始めた。
声は弱々しく小さいので俺は耳を近づけた。
「お腹、空っぽ」
行き倒れだった。呻き声は空腹過ぎだったからみたいだ。
とりあえず、何か食わせてやるか。
俺は美少女の太もも下側と腰に手を添えて持ち上げた。所謂お姫様抱っこだ。
だって仕方ないだろ。引きずるわけにもいかんし、おぶろうにもぐったりなんだから。
俺は美少女を抱えて店の中に戻った。
体が冷たいのには驚いたな。
とりあえずカウンターの椅子の上に寝かせた。
「…ご、ご飯…」
どんだけ腹減ってんだこの美少女。
今、ここの材料で簡単に出来るのは…ナポリタンか。
俺は早速、ナポリタン調理に取り掛かった。
まず鍋に水と塩を少々いれ沸騰させていく。その間に材料のピーマン、玉ねぎ、今回はウインナーを細切りしていく。
ガチャ
「
家に繋がる扉を開けて親父が出てきた。
「親父、いや行き倒れ美少女がいたからナポリタン作ってる」
俺の親父は「行き倒れ!?」と声を上げ、何処にいるかキョロキョロ探し始めるので、カウンター椅子に寝かせてあると教えて、カウンター席の方へ行く。
「確かに美少女だ」
まさか、それを確かめるために見に行ったんじゃないよな。
「…ん?文、沸騰してるぞ」
鍋を見ると確かに沸騰してた。音でよく分かるもんだ。いや分かるか。
親父は母さんを起こしに行くと言って家の方に戻っていった。
沸騰したところでパスタ麺を茹でていく。
茹でてる間に油を引いたフライパンでウインナーと玉ねぎを炒める。
しんなりしたところでピーマンを入れて今度はさっと炒め、ケチャップで味付けをする。
後は麺をいれて絡めるだけで完成だ。
今回はパスタ麺は火を良く通したベンコッティと呼ばれるやわらか麺にしてある。そうすることで昔懐かしい、馴染みあるナポリタンになる。
「ん…んん」
「起きたか?」
匂いに釣られたのか美少女が起きた。
上体をむくりと起こして、寝起きのようにぽーっとしてる。その姿さえ神秘的な感じに見えるとはこの美少女はヤバイな。
「もう少し待っててくれ。ナポリタンもう出来るから」
「…えっと」
「お腹空いてるんだろ?」
「…うん」
コクンと頷いて、そのまま俯いた顔は恥ずかしいのか真っ赤に染め上がっている。あと空腹だからか顔色が悪い。
「ほい、食え」
カウンターテーブルに完成したナポリタンを盛った皿と紙布巾の上にフォークを置くと、美少女は俺を覗き込むように見つめ「……いいの?」とぎこちなく呟いたので、「遠慮はするな」と返す。
すると美少女は、ぱあっと笑顔になり視線をナポリタンに向けて、手を合わせた。
何か可愛いな。
「…い、いただきます」
「おう」
美少女はスパゲッティを巻いて口へと運んだ。
「ん〜〜〜〜♪」
どうやら口にあったようだ。
それから黙々と口に運んでいく。しかも、美味そうに食いやがるぜ。作った甲斐があった。
おっと、洗い物洗い物。
「ごちそうさまでした!」
はや!
食べ終わった顔もまた満面な笑顔だ。
「お粗末様、じゃあ皿とフォーク洗うからくれないか」
「…うん」
「おかわりはいるか?」
「…え?」
「まだ空いてるなら作ってやるよ」
「……お、お願いします」
一応聞いたけど、断ると思っていたから驚いた。大分お腹空いてたのか。てか、まだ8時半なんだよな。
「なあ、何で路上で行き倒れてたんだ?朝飯食わずか?」
「…えっと……」
「いや、言いたくないなら良いんだ。気になっただけだし」
女の子にこういうの聞くのは野暮ってもんなのかな。客として女性はいたが交流はそんなにないからな。
「ううん。助けてもらったのに、教えないのはダメだと思う……私、昨日この近くに引っ越してきて朝早くに探索しようと思って出てきたんだけど…道に迷って帰れなくなって」
「スマホは?マップアプリあるだろ」
すると、美少女は目を泳がし始め、暫くして顔をまた赤くして俯いた。
それだけ挙動を見せられれば察するよ。
「……忘れたんだな」
「イエス!エクセレント!」
「イエスじゃねぇ!」
「はい」
はぁ、仕方ないか。
朝は混むんだけど、まあ今日は母さんもいるし、大丈夫か。
「送ってやるから、住所教えてくれ」
「え?いいいいいいいよ。そこまでしてもらうのは悪いよ」
美少女は手と顔を全力で振りながら全力で拒否する。全力ってところが何か傷つく。
「迷ったんだろう。どうやって帰るんだ?」
「うっ」
美少女は痛いところ突かれたとばつの悪そうな表情をした。
「帰れなくて良いのか」
「それは……お願いします」
「よろしい。最初から遠慮すんな。ナポリタン食っておいて今更だろ」
「……そうだね、へへ。ありがとう…えっと」
あぁ、そう言えば名前を名乗ってなかったな。
俺は
名前が女子みたいだが、ちゃんと男だからな。
小さい頃から『Natume'sCafe』家業の手伝いをしている。
俺は美少女に名前と高校二年の簡単な紹介をした。
「それで、君は?」
「佐倉、
「いきなり下呼び」
「ダメ…かな?」
佐倉は自覚か無自覚か知らないが上目遣いで捨て犬みたいな悲しい顔で見つめてくる。
上目遣いが可愛いなんて漫画や小説世界だけだと思っていたが、現実でそれが今起きている。
ホント反則。
「駄目ではない。いきなりで困惑しただけだ」
「ありがとう。文くんも一葉って読んで」
「いや、俺は良いよ。俺的に佐倉が合ってる」
「ダメですぅ。文くんと私は対等な立場なんだから一葉じゃないとダメ」
佐倉は椅子から立ち上がり、栗色のセミロングの髪をふわりと靡かせて俺の方までグイッと体を伸ばし、むすっとふてくされる面持ちで言った。
それよりも近い。お姫様抱っこの時はわからなかったけど、佐倉は凄い良い香りがする。
変態と思わないでくれ。髪が靡いたから漂って来ただけなんだよ。
「佐倉さん」
「一葉!て、何でランク下がってるの!?」
と言いながら上下に体を揺する。すると、ゆさゆさと上下に揺れる胸が見えてしまった。
どうやら発育が大変良いらしい。
だが、仕方ないのだ。カウンターとキッチンの仕切りとなる付け台がこの喫茶店にはないんだから。
「こうなったら、ランクアップ魔法発動!」
「何だと!?」
「お、ノリ良いねぇ。私は文くんの私への一人称を対象に発動。これにより文くんの一人称は佐倉に戻る」
「どうやって?」
「……………」
佐倉はまた目を泳がして沈黙した。
考えてねぇのかよ!
「ぶふっ…あはははは」
「あぁ文くん笑ったぁ」
「いや、だって…面白いから…はは」
「むぅ」
「悪い悪い。お詫びとしてダブルランクアップにしとくよ、一葉」
「おぉ!私の勝ちだね」
ブイっと一葉は笑顔でブイサインを俺に向ける。
そう言えば時間……ヤバイな。いや、俺じゃなくて一葉が。
「とにかく一葉早く住所教えてくれ!」
「ほへ?何で?」
「時間!今7時半だ。こんな時間までいなかったら流石に怒られるだろ」
「嘘!?本当だ。行きながら教える」
「行きながらだと迷うじゃん」
「そうじゃん!」
ノリよくも頭を抱えてあわあわ慌てながらも一葉に住所を教えてもらった。
距離的に徒歩で30分って所だな。
ガチャ
「どうした?文」
「親父ちょっとこいつ送っていくから」
「お、おう。気を付けてな」
「行くぞ」
「あいさー」
これが俺と一葉との出会いの始まりだ。
――――――――――――――――――――
読んでくださった方々へ
どうも翔丸です。
えっとですね。投稿はするのですが、『可愛い女の子のいきなりプロポーズから始まる僕を惚れさせるお付き合い!?』をラブコメ枠として優先的にやっていくと思うのでいつになるか分かりません。
すいません(*/□\*)
主軸は異世界召喚モノです。話数少ないですが。しゅん(;´д`)
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