第23話

白木さんや、ソファーで寝ると腰痛くするよ。


その日は珍しく今村さんと、これまた珍しい

蟬塚さんもいた。


蟬塚さんはまだ初めましてから

そんなに日が経っていないくらい

会う確率が極端に低い。


だいたい変なクチコミによって

車でしか行けないようなところからでも依頼するような

マニアックなお客さんの相手をしに行っているのが

彼だ。


白木さんの部下とはなっているが

その実この土地は蟬塚さんが貸しているらしい。


ますます分からない会社だが

一部からは猛烈に需要はある。


ただうちも依頼の振り分けはする。



お祓いが必要になるクラスの案件は神社にまわし、

死後の彼、彼女達に思いを伝えて欲しいと会話の代行を仰せつかる案件や、

遠距離、地方案件は蟬塚さん。


現場がホテル、アミューズメントパークや病院、

デパートなどの大衆・家族向けの施設の案件は

だいたい今村さん。


白木さんはというと店番をし、


私はと言うとまだおしりに殻のついたような

新米すぎてできる案件は限られている。

ただ私は案件を「ひっぱって来てしまう」タチらしくあまり案件を振り分けすらされない。


要は何でも屋だ。


おおくは「生きている間」に完結できなかった事に

未練を持った人たちのことを

この世に留めてしまっている人たちに

それとなく仲立ちし、故人に成仏を勧める。


言ってやすし、行って至難。



故人、なかなか成仏できないパターン多いんだよね。

テレビではお経上げて成仏させてるんだけど

やっぱり人の情念って

ねちっこいから。いいいみ わるいいみ。

それだけじゃあ解決しない問題が

わんさか出てくるんだよね。



下手するとひと月まるまる1個の案件に費やす事もあるし

案件のかけ持ちなんていつもだ。


電話で聞いたり話を聞いていく「だけ」じゃ

判別できないから

受け入れ拒否もできないし

面倒なところ飛ばして相談されるから

いざ根掘り葉掘りしたら

大変こんがらがった案件でしたなんて事もざら。


見る。


これに尽きる。


だから私たちの仕事は見えるものだけじゃなくて

見えないものも

目を凝らして見て感じ取っていく作業を

していかないといけないし、

人の言葉の真意を見抜いていかなくては

根本まで触れない。



いくつも用意されたエンディングパターンなんて

製作者じゃないと攻略できないし

たどり着いてしまうエンディングは

やり直しがきかない。


もし本人たちが「望まない」ことが

エンディングでも

本当知られたくない」のことを掘り起こすのがエンディングでも

それがみんなにとっての「平和」でも

「正解」でもないことがだいたいだから

何をどこまで話すか、それ自体を

依頼者に尋ねることもまた人による。


程度、采配、力加減。


リセットボタンどっかで売ってないかななんて

みんなでよくグチる。


それくらいには面倒。










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