第21話

しばらく母さんと話していたおじさんは

横に座っていた俺にぐるりと体を向けた。


「ぼうず、自分のしたいことをしないと

人生短いんだ」

「お前のおじいさんも孫がやりたい事出来ないの見てるの、悲しむぞ」


一気に核心をつかれて沈んでた何かが

べろりと剥がれて浮かんだ。


バチりとハエが天井の電気に向かって突っ込んで

はじかれた音がした。


そうだ、約束したんだ。

じいちゃんと。


俺はじいちゃんといた時が楽しかった。

自分がやりたい事じゃないと俺は動けないし

母さんの思う通りには出来ない。



ヒステリックに怒り、手を引っ張る母さんを

後目しりめ

「じいちゃん、俺、沢の生き物の勉強したいんだ」と独りごちた。

「じいちゃんが連れてってくれた沢にいた生き物が減ったんだ。俺はそれをもとの綺麗な沢に戻したい。」それだけ伝えたかった。



まわりに話を聞いてくれた大人がいて、

自分では適わなかった壁にそれは

超えなくてもいいって言ってくれた。

それに救われた。



今はじいちゃんでもおじさんでも、誰でもいい。


2話 祖父との「約束」

おわり



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