第19話
「何で皆と違う事してるの」って
他人から言われたら結構なパワーワードになりうる。だって、「皆」が「同じ」ようなことしてる風に見えるのは「あなたの目線」がそれだけを
映しているからであるだけでしょ?
少なくとも私には世間の共通概念何て
今のところ
お金を払わなきゃ万引き、と
人は必ず死ぬ位しか見当たらない。
人なんて想いのすれ違いで出来ている。
自分の力が相手より強いと思うのは単なる
ものの知らない人間の思い込みだし、
総合評価したら勝つかもしれない。
親子だってすれ違う事なんて山とある。
人間なんだ、お互いに意思だって欲だって好奇心だってあるし、程度もちがう。
けれどそれを伝えないと違う「価値観を持って生きる人間」という事を相手に理解されず
取り込まれてしまう。
少年は伝えたいんだ。
机を「離さないで欲しい」と、
うちを見つけてやって来た。
またうんうん唸る。
「お嬢、あんまり詰めすぎんなよ」と白木さん。
この手の話は私はあまり得意ではないらしい。
結局話し合いの結果この仕事は
白木さんが引き受けてくださった。
面倒臭いも愚痴も漏らさず、いやな顔一つせず。
いくつかの紙束と
茶色く変色している7年前の電話帳を引っ張り出し
黒電話片手にまた何か
こもりがちの細い声で「商談」していた。
数日後に
触れてみた。
滑らかな良い木質の机だった。
白木さんは机の引き出しを全て開け、机の下に潜り込んで隅から隅まで見回してから
またいくつかの場所に連絡をとり
何人かとアポを取っていた。
そう言えば最近白木さんいなかった。
「しがらき、俺明日から3日間いないから、
店よろしく」とだけ言い残され店を去られた。
その3日後に白木さんは件の少年も連れて帰ってきた。
そのさらに54分後の今、
お茶を啜り、私はどこにいるかと
言うとお店の裏の給湯室にいた。
お店では女性の金切り声に近い声と
珍しく声を張る白木さんの声と、
全く感じられなくなった少年の存在感。
聞いてるこっちが耐えきれなかったが
今私が出ていけば余計に火に油を注ぐことになる
だけだろうからやめた。
火傷をするのはゴメンだし
あれ以上事をややこやしくすると
白木さんでも止めにかかれなくなる。
裏口からそろりそろりと金属のタブを回し
店を出ようとすると
ここら辺の商店街では似つかわしくない、
ネクタイを締めた恰幅の良い男性がドアの真横に立っていた。
あまり見かけない男性は背中と左足の
ふくらはぎが黒くモヤがかかっていた。
「孫は、何で儂が見れないのかね」
と悔しそうな声が聞こえた。
「見たくても、見ようとする余裕がないから
じゃないでしょうか」とだけ残した。
男性は深い溜息をつかれ、
孫の肩に乗る重みに大層哀れんでいた。
秋晴れの気持ちのいい空だった。
雨降る要素ひとつなく。
高い木から落ちた赤い葉っぱの
上をガサガサ音を立てて
店をあとにした。
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