第13話

少年の依頼は家具をひきとって欲しい、と

シンプルなものだった。


机は勉強机。彼の祖父が買ってくれたもの。

彼は祖父が好きでおじいちゃん子だったらしい。

彼自身も勉強は好きらしく、

その机で勉強することは祖父との繋がりだった。


しかし祖父が春先に亡くなってからは

彼の母親が一変して彼は受験戦争に巻き込まれた。

机の前に座ることは彼にとって苦痛で

でも祖父とした「約束」を果たしたい彼は

もう疲れきっていて、どういう訳か

うちを探し出してうちに来た。


うん、もうこれ、どっから手つけていいか分かんないけど

触るんじゃなかった。



「好き」なものや思い出を誰かに汚されることほど

不愉快極まりないものは無いのと、

第1これが解決したからと言って彼の学生生活が

終われるわけでもないし彼だって

進学しないといけないのだ。


前に進まなきゃ。

前にこの子を進ませるにはどうしたらいい?


この歳じゃ無理に机を回収して

忘れさせれる訳にもいかないし

かと言って机を捨てさせたら

きっと大人になった彼はずっと後悔する。


私がうんうん唸っていると

彼は私の飲みさしの湯のみにお茶を淹れてくれた。


何この子、白木さんより優しい。



とりあえず話を聞いて今日はどうすることも出来ず

作戦を練ってまた彼と会うことにした。


その日彼はうちにきて初めて首を縦にふった。


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