第4話
着いたお宅は丁寧にいじられた植木が置いてある
良く片付けられた玄関が見えた。
達筆な墨の字で「安藤」と書かれている。
インターホンを押して20秒、バタバタと息を切らしたような声で「今開けますからねー!」と。
多分走ってこられると私はビックリして引いてしまう。おおぅ、と躊躇ってしまう。
出てきた女性はうぐいす色のスカートをはいた
柔らかそうなパーマが似合うこれまた
声の通り活き活きした、ような女性だった。
「初めまして、今回白木の代理で参りました、
住ノ江しがらきと申します。」
「すみ…しが…」
たぶんこれまでの経験上この挨拶だけでは
名前を覚えてもらえず
おもむろに薄いスチール製名刺入れから
名刺を2枚差し出す。
1枚は白地に紺色の字で名前にルビを振った
私の名刺と、もう1枚は会社名と名前、電話番号だけ書いてある
シンプルな白木さんの名刺。
色々な情報を載せる広告にもなってきた名刺業界に遡行して私たちの名刺は何とも簡素だと
馴染みの文具店の大沢さんに言われてる代物だ。
「変わってますよね…、父方の祖父が
結構な骨董好きだったもので孫にまでつけてしまった次第です」と、
あきれ困ったように眉じりを下げると
安藤夫人も緊張が取れたかのような笑みを浮かべた。
ちなみに本日の渡すお菓子は小豆が美味しい
酒饅頭である。
故人、
道中白木から連絡があったので急ぎ買ってきたものだ。
秋晴れのさ中、もう秋雨は降らない。
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