第8話 実験

今私がここに存在している理由。

ただの象徴として必要なのか。

それとも何かしらの能力を必要しているのか。


「ねぇクロゥさん、今までこちらに渡ってきた女神には、

特別な能力が有ったの?」


「それぞれじゃないか?

俺が知っている女神はハナエ様だけだが、

何か奇跡を起こしたなどと言う話は聞いた事が無い。

しかし遠方での話だ、情報不足の可能性もある。」


つまり女神は無能でもいけるのか。

しかし、私はそんな状況は納得できない性格だ。

日本でだって、自分の努力と能力で給料を稼いでいたつもりだ。

それを、ここでは異世界人だからと言う事実の上に胡坐をかき、

我儘し放題OKですと言われても、自分自身それはできない。


「今現在で、私に何の能力があるのか分からない。

だから無償での施しはいらない。」


「そう言ってもな、

女神には尽くさなければならないと言う理が有る以上、

お前が拒んでも、向こうから寄って来るぞ。」


「それはおかしいって。

本で読んだけど、たかだか初代の女神が奇跡を起こしたってだけで、

それをいつまでも言い伝えるってどうかと思うわ。

現れた全ての女神が奇跡を起こしたのなら納得しますけど、

何にもしないのに、メチャクチャ優遇されるのっておかしい。」


「お前はそれを幸運と思わないのか。」


「思う訳無いじゃないですか。」


でも、他人が勝手にやって来るなら、拒む事も難しくなる。

女神である証拠って何だろう。

それさえ分かれば、打つ手が有る筈だ。

するとクロゥさん、また私の考えを読んだのか?


「一言でも自分が女神であると他人が知れば、

その噂は雨のごとくまんべんなく浸み渡っていく。

絵姿は寸分の狂いも無く描かれ、各教会がかかげる。

それを多くの人間が拝みに来るって訳だ。」


「では、人体的に特徴がある訳じゃ無いのね。」


「まあ、女神には目印と言われる物は、見当たらないらしい。

だからこそ、女神不在の期間が有ったんじゃ無いかと思うんだ。

自分が女神と知らずに、そのまま人の中に埋もれて行ったかもしれないし、

お前みたいに、特別視されるのを嫌がったのかもしれない。」


「それなら私は、自分が女神であると吹聴しなければいいのね。

って、クロゥさん、もう誰かに言った?」


もし言ったなら、既に情報が広がっているかもしれない。

するとクロゥさんはニヤリと笑う。


「そうだな。

俺がお前の事を、出入りの商人一人にでも話していれば、

もうすでに王室にまで伝わっている事だろうな。」


っつ……。


「だが、俺は誰にもいっていないし、

マリアーヌには頭のおかしい女を拾ったと言っただけだ。

まああれも利口だからな。

勘付いている可能性も有るが、

俺が言葉にしなかった以上、振れ回る事などしないだろう。」


「セーフ…。」


助かった~。


「ならば、私はその頭のおかしい女でお願いします。

それならばこの先、この世界に慣れない私が起こした事も、

全てそれで通るかもしれないし。」


「自分からそんな者になりたいとは、マジでおかしな女だな。」


私にとって、それは誉め言葉だ。

他人と同じことをやっていては、化学などは進歩がない。

科学?…科学か……。


「ちょっとお尋ねしますが、この世界に魔法とは存在しますか?」


「そうか、お前にはその辺の常識も無かったな。」


すいません、常識知らずで。


「こちらには魔法と言うものがある。

ただし、その潜在能力の有る人間限定だがな。

能力自体にも温度操作、光、物質操作、など有るが、

さらに内容は細分されるようだ。」


「ファンタジーだな。

ノベルいけるのか?」


あの本は、科学で証明される物も有ったが、

全然つじつまが合わない所が、また創造意欲を掻き立てる、

だからかなり読んでいたな。


「詠唱すると火が出るとか?」


「出来るな。」


「物が凍るとか。」


「出来るな。」


「ド〇コデモドア!」


「何だそれは。」


「例えばここから、知らない街に一瞬で行けるとか。」


「転移魔法か。

知らない所には行けないが、一度行ったところなら行ける奴はいる。」


すげ~、相対性理論か?分子、遺伝子どうなってるんだ。


「四次元ポケッ〇!」


「その言葉も分からん。」


「簡単に言えば、何でも、いくらでも入れられるカバンてところかな。」


「何だ、それか。

俺も持っているが。」


へ?

クロゥさんは、懐から革製の小袋を取り出し、徐に口を開いた。

持っているっていう事は、これはあれだよね。

尊敬するドラ〇もん師匠の秘密の道具。

それから、出てくる出てくる。

水筒、食料、刃物、毛布、テント、挙句の果ては、木の枝が山と。

まんま野営道具っすね。

理論マジ知りたいけど、多分魔法の一言で片付けられるんだろうな。


「で、科学とは何なんだ。」


えっと~、


「分からない可能性が高いけど、一応説明するとね。

私の専門は物理化学で、」


「物理とは何だ。」


そこからか~。

ん~~~~。


「ねえ、ここの通貨ってどんな感じ?」


「金か?」


そう言うとポケットから、また違う革袋を取り出す。

それを机の上で中身をばらまいた。

おっ、有った有った。

私はそこから1枚の銅貨を拾い上げた。



※※※※※※


この作品、一話平均PV4でした。

つまり読んで下さっている方って4人ぐらい?

でも、自分的に好きな作品(まあ、全作品好きで書いているんですけどね。)

ですので、頑張ります。

これからもよろしく!

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