第26話 変桴化《カフカ》の脅威

「ちっ、あいつどこ行きやがった.......」

 火龍ひりゅうラヴァと岩龍がんりゅうログは右砲竜うほうりゅうフォーコを追い竜治院3Fで交戦していたが、突如フォーコの床に夜空の青が広がる空間の輪が開き、フォーコはそこに沈む様に逃げて行ったのだ。


(下に沈んだって事は2Fにいるはずだな.....)


「ログ! 2Fに行くぞ! 」


「あぁ」


 ラヴァとログは2Fへと降りる。


「おっ! 危ねぇ! ログ、床の穴が開いてんぞ!」


(他にも何個か床が抜け落ちてんなぁ.......)


「ラヴァ、あそこにフォーコがいるぞ 」


 後ろにいたログが通路に出て左の方を指差す。

 そこには今、通路の角を曲がろうとしている、フォーコがいた。


「てめぇ、待ちな! フォーコ! 」


 ラヴァは全身から熱気を放ち赤い鱗が刺々しくなっている足に力を入れ、地面を力強く蹴り全足力でフォーコを追いかける。

 フォーコが曲がったと思われる方向からも爆発音が聞こえていた。


(右に曲がったか……ん......何だ?)


 通路の角からフォーコの腕らしきものが出てきた。腕の棘を数本発射する。


時炎怒ジエンド!! 」


 ラヴァは炎の剣を振り払いフォーコの 右裁榴ミサイルを"無効化"していく。

 ラヴァはその時近くに散らばっていた木の破片につまずき転んだ。


「いてー」


(あぁ? 何だよ....木が散らばってんな......その辺のもんがぶっ壊れたのか?....じゃねぇ!...逃げられる!)


「ラヴァ!大丈夫か? 」


 ログが後ろから声をかけた。


「あぁ! 平気だ。」


 すぐにラヴァは体勢を立て直しログと共にフォーコを追う。


 すぐに通路の角を曲がった。


(うぉっ!.......びっくりした!)


 ラヴァは通路を曲がった先に茶髪に赤毛が混ざった少女が突如現れたので驚いた。


「ハァ......ハァ.......やっと追いついたよ、ラヴァ、フォーコは?」


 リィラがそう言い終わるまえに後ろの左側の階段から治療士ロウラが降りてくる。


「良かった......貴方達も無事ね......」


 2人無事反対側の階段から降りてこれたようだ。


「......リィラ、びびったぜ....フォーコは後ろだ...てゆうか見なかったか? 」


 リィラはラヴァに突然質問する。


「いきなりごめん、ラヴァ、私が子供の頃、村で夕飯を食べた時の事を覚えている? 」


(ん.....子供の頃? 村で? リィラとメシ?......ねぇなぁ)


「何言ってんだ、リィラ? 俺は村でメシ食った事ねーぞ 」


 リィラはホッと安心した様な表情になった。


「…….良かった、あなたは本物のラヴァだわ 」


 そう言われたラヴァは、何言ってんだこいつ、という表情で顔をしかめていた。


(.....ん?....どういう事だぁ?......あぁ....そうか!)


「まぁ、でも念のためにこれに触れて欲しいの 」

 リィラは時炎怒ジエンドを発現させた。


「ん、なんでだ?」


「フォーコは"変身能力"を持っている、これなら触れただけで解除されるんじゃないかって思ってやってみたの 」


「ん?、俺の時炎怒ジエンドに、んな力あったか?」


 リィラは少し困惑した表情をしていた。


「う、うん、ラヴァと修行した時も打ちあった時、砕練刀サイレントの能力が発動しなかった気がするの 」


(ん?......そうだっけか?....)


「そ、そうか、時炎怒ジエンドは....."力"のある剣じゃなく、"竜の能力を発動させない"竜技って事か?」


「えっと、ハッキリとは言えないけど、ラヴァはそう思わない?」


(そういや、俺あんまり気にしたことなかったな)


「まぁ、俺も長いこと使ってるが、まだまだ分からない事もあるぜ、その時は教え合いだな!」


「えぇ、よろしく!ラヴァ!」


 治療士ロウラがリィラに言う。


「リィラ、早く、セレンとエンジュを助けに行きましょう!」


「ん?そういや一緒じゃねーのか?」


 リィラは少し不安そうな顔をした。


「それが....紫色の竜に襲われて、3Fで、闘ってるわ。」


「あいつか! 確か、シオンって言ってたな、気絶していると思ってたが、まだ......リィラ、行くぞ、フォーコは後だ!」


 その時ラヴァは背中に手を当てられる感触を感じた。


「動かないで下さいね、私の右裁榴ミサイルを撃ちます」


 ラヴァは聞き覚えのある声にゾッとした。


「てめぇ、ここにいたのか!」


 リィラは突然の状況に立ち止まる。


「う、嘘.....ログに化けていたなんて 」


(何でだよ、確かにこいつはリィラの後ろの通路に逃げて行ったはずだ、それに、ログも後ろからついてきたはず......)


「ラヴァ! 」


 リィラは砕練刀サイレントを発現させフォーコへと距離を詰める。


「遅いです! 受けなさい! 零距離ぜろきょり右裁榴ミサイルを!」


 フォーコは右腕のありったけの爆発物の棘をラヴァの背中に刺した。


「ぐぁっ! 」


(だめだ、間に合わない!)


 ラヴァの背中に刺さった肌色の棘は少しずつ色が赤になっていく。

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