第10話 決意

 青い髪の女性は傷付いた龍と少女を治療していた。

 少女は目を覚ました。


「……ここは……?」


「良かった、ねぇ私の声が聞こえる? 」


「……はい……」


「私の名前はロウラよ!貴方は?」

「私はリィラ......」


 リィラは寝た姿勢のまま周りを見渡す。となりにログが横たわっていた。


 ログはリィラの方向を振り向いた。そして不気味な笑みを浮かべた。



「やっと見つけましたよ、全く手間を掛けさせましたね。」


 ……そんな!?



 ログの右腕から棘が生え始めた。リィラの方に腕を向けている


「さぁ次は貴方の脳天にこの右裁榴ミサイルを撃ちます。」


 リィラはあまりの事に身動きひとつ取れなかった。

 

 瞬間、視界が真っ白になった。



 ***







 ーー誰かに体を揺り動かされている。

 女性の声が聞こえる。


「ねぇ!しっかりして......リィラ! 」



「.....!」


 リィラは飛び起きた。


 ここは?



 フカフカの布団の上で寝ていたようだ。となりに青い髪の女性がリィラを見て微笑んでいた。


「......ロウラさん......」


「えっ?私を知ってるの?」


「いえ! 似てる子がいてつい……」


「そう、私と同じ名前がいるなんて奇遇ね……でも良かった......元気になったわね......」


「助けてくれてもらってありがとうございます。それと......」


「一緒にいた岩龍なら隣に居るわよ、治療を受けたばかりで今は熟睡状態よ、あとここは"龍治院"だから、安心してね。」


 隣には身体中ガーゼや包帯が巻かれている静かな寝息を立てているログがいた、リィラは思わずログの心臓に手を当てる。

 ドクン......ドクン......と心臓が脈打つ音が聞こえる。


 目から涙が溢れて来た。


「本当に......ありがとうございます......」


「あらまぁ...大丈夫? リィラ? 私は治療士として当たり前の事をしただけよ、気にしないで。それじゃしばらく休んでてね」


 ロウラさんはドアを開けかけたが、後ろに振り返り


「あぁそうだ、貴方達を助けたのは私だけじゃないわ、赤い龍があの時、偶然私達を見つけて助けてくれたの、その後色々あったのよ……貴方の知り合いみたいだったけど貴方達本当に危なかったわね......まだここにいるから今呼んでくるわね」


 そう言うとロウラは部屋を後にした。






 ***


 山の麓付近で深碧色の竜が歩いている所を茜色の龍は見つけた。


「あれぇ?あなたは確か岩龍を追跡してるんじゃなかったっけぇ?」


「あなたは……?」


「私はピアっていうの! 闇劇家あんげきかだよ!」


「私は右砲竜うほうりゅうフォーコです、申し訳ありません、ピアさん、私は岩龍を追跡しましたが、思わぬ邪魔が入り一時撤退しました。」


「えぇ、そうなんだ! でも大丈夫よね? ねぇシオン! 」


 ピアは後ろから現れた紫色の竜に声をかけた。


「えぇ、部落扉跡何令寸ブラットアドレスは追跡を継続している……」


 紫色の龍は空気中にいくつか浮かぶ紫色の水状の雫を指差しそういった。


「思わぬ邪魔というのは茶髪に赤毛の混ざった少女のこと?」とシオン。


「いいぇ、青い龍と赤い龍が邪魔をしたのです、青い龍は負傷していたので、私の攻撃で直ぐに倒れましたが、赤い龍の猛攻に耐えられず、撤退したのです。」


「赤い龍? どんな竜技りゅうぎだったの?」とシオンは聞く。


「確かやつはこう言ってました..........」


 その名を聞いたシオンとピアは震え上がった。心が昂るような気持ちになっていた。


「ピア、私達の目標は一つ、だけど内容は二つよ。」


「そうね! フォーコ! あなたはいい仕事したわ!"好き"になりそうなくらいにねぇ! 」

 目を煌めかせピアはいった。


「まずは、フォーコの治療をお願い」とシオン。


「分かったわ! それから3人で追跡ね?」とピア。


「えぇ。私達は輝いてみせる。」


 薄暗い森の中生暖かい風が吹きあれていた。



 ***


 リィラが休んでいた"龍治院"の一室に赤い龍が部屋を勢いよく開けて来た。

 リィラはいきなりドアが開きビックリした!


「わぁっ!!」

「おっと……悪りぃ……リィラ……怪我はねぇかよ?」


 久しぶりに会ったような気がする、といっても2-3日前の事だったかもしれない。


「ラヴァ! 助けに来てくれたんだ! 」


 リィラは頰を赤く染めた。


「ごめんね、薬草取りに行っただけなのに、帰りが遅くなっちゃって」


「い、いや別に気にすんなよ! ちょっと修行で山走ってたら、たまたま見つかっただけだし、龍治院の姉さんがいなかったら危なかったしなぁ!」


 ラヴァはそっぽを振り向きそう言った。尻尾を振っている。

 ......これ、照れてるの?


「あの山で色々あったからなぁ、リィラ、話さないといけない事が結構あるぜ? 」


「ラヴァ!私からもお願いがあるの!? 」


 リィラは真剣な表情でラヴァを見つめて言った。


「ん? なんだ? 」

 ーー....


 ーーーー......


 ーーーーーー.......


「あなたの、竜技りゅうぎ……『時炎怒(ジエンド)』を教えて欲しいの!」


 ラヴァはそれを聞くと、少し頰を緩めたがすぐに真剣な表情になり、


「あぁ、いいぜ……教えてやるよ、俺の竜技りゅうぎを!」


「まぁ、まずは元気になれよ! それからな!」


「えぇ!」

 

 こうして火龍ラヴァはリィラの"竜技の師"に、

 少女リィラは火龍ラヴァの"竜技の弟子"となり、

 これからの運命の歯車を回し始めた。





 〜龍治院編へ。










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