第6話 奇襲

 リィラが発ち30分程経過していた。


 岩龍がんりゅうログは木に座り休んでいた。


(俺は、どうしてこれが使えたのだろう)


 忘岩ボウガンを手に発現させたログは疑問に思っていた。


(忘岩ボウガンという名前は前から知っていたのか? あの時いきなり思いついたかのように自分の手に現れてきた.......)


「俺が使える竜技は砕練刀サイレントだけだったはずなのに」


 岩龍は顔を覆うと色々考えこんでいた。


(まだ、俺は全ての事を思い出せていないのか......俺の記憶は一体......)


「ログ!」


 少女の声が聞こえる。

 岩龍は顔をあげた。

 赤毛が混ざった茶髪の少女が近づいて来るのが映った。


「リィラ……そろそろ出発か? 俺は……問題ない、出血も止まってきている」


 雨が弱まってきていた、曇りの空にも奥の方では晴れが射してきている。


「えぇ……そろそろ出発しましょう……龍治院に......」


 リィラはログに肩を貸そうとする。それをログは手で制する。


「大丈夫だ……もう……歩けそうだ……」


(リィラにずっと肩を貸してもらうわけにはいかない、リィラは疲れている。)


「遠慮しなくていいわよ」


 岩龍は微笑んでいった。

「分かった……だが……今は大丈夫だ.....」


 リィラは少し溜息をついて言った。

「無理はしないでね……休みたい時は言ってよ」


「あぁ」


 リィラとログは龍治院に向け川沿いを歩いていく。雨が止んで来ていた。


 ***


「良かった!……ねぇ!ログ!見えて来たわ!あそこが龍治院よ」


 リィラとログの2人は山のふもと付近を進んでいる。


 龍治院は遠くに見える街の中心でどの建物よりも大きくそびえ立っている。


「もう少しだな……」


 ログは安心した口調で話す。


 2人は山の麓を下り坂を踏みしめる所だった。


「貴様! そこから動くな!」


 後ろから怒ったような声が聞こえた。


 リィラとログは振り返る、近くに流れる川から現れた青い龍がリィラ達に目掛けて飛び込んでくる。


清練セイレン!!」

 青い龍は水で刃を生成し斬りかかってきた。


砕練刀サイレント!!」


 ログは襲いかかる刃を岩で生成した刀で弾き返す。


 青い龍は後ろに引くと刃を構えた。


「まさか!もう追って来ていたの?」


「貴様らが襲いかかってきたからだろうが! 追われて当然だ!」



 青い龍は怒り猛々しくそう言った。その顔は狼の様な風貌を感じさせ、水色の目に黒い瞳が縦に細長く入っている、体つきはログよりも細みのある感じで青い鱗が全身に生えている。


 喋った時に見える口に生えている牙はとても鋭く尖っていた。


「えっ? どういう事?」


(心当たりがない! 何か勘違いをしているんじゃ……)


「お前には関係ない事だ!邪魔をするなよ!」


 青い龍は再び清練セイレンと呼ばれた水の刃を構え、襲いかかる。

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