第5話 錬天術について③
シルヴァリウスの授業を終え、本日最後の授業。
センリ・ハヅキによる物質強化の授業だ。
「皆さんは先程シルヴァリウス先生から肉体硬化の授業を受けてきたかと思います。先生の授業で内部干渉についてきちんと学べた上で、私の授業では内部干渉を応用して物質を強化していきます」
落ち着いた口調で淡々と進めていくセンリの授業は、先程のシルヴァリウスと違って先生然としていて授業の雰囲気も凛としており、女生徒から大層人気があった。
同じ屋外なのに砂埃舞う猛々しい荒野と、涼やかに風が吹き抜け木々が揺れ唄う昼下がり、くらいの心象差がある。
ヴァンがふと学院内で耳にした話をセンリに問う。
「先生、そのシルヴァリウス先生と古い仲って本当ですか?」
「えっ!?そうなの!?」
思わず驚きで声に出してしまった。イメージ違いすぎるんだもん。
しかし、アルエーリ以外は皆、今まで聞くに聞けなかった顔で興味津々に耳を傾けていた。
ヴァン、いつからお前は学院の情報通になったんだよ俺にも教えとけよ‥‥
「ええ、私とシルヴァリウスは生まれは違えど、今現在皆さんも通われているこのマクドキア学術院で錬天術を修めていた旧友です。ちなみに皆さんのクラス担当であるレベッカも同期に当たりますよ。当時は学術院のアイドルでしたねぇ」
昔を懐かしむ口調でヴァンの質問に穏やかに答えるセンリ。
ってちょっと待てアイドルゥ!?
「やっぱりリーリちゃんは昔も可愛かったんですね」
納得といった様子でヴァンがうんうんと頷いている。
ん?昔、も??
「待て待て待てヴァン、ヴァぁぁンッ!おれあの人にぶっ飛ばされた記憶しかないんだけど!正気に戻れ!!」
親友の正気を疑う俺。一方親友はというと、
「アル、ぶっ飛ばされてるのはお前だけだ。基本的には優しい先生なんだよリーリちゃんは」
「りーりちゃんっっ!!?」
「それに気絶するから知らないだろうけど、錬天術を使うとあの人若返りするんだよ。普段も大人の綺麗さがあるけど、若返ると可愛さにステータスが振られるからハヅキ先生の言うことも全然不思議じゃない」
三十路手前の女教師にご執心であった、、、、、
というかクラスの男子全員が頷いてやがる。
ぶっ飛ばされすぎて正気を失ってるのはお前だと言わんばかりだ。
まぁ俺には一応許嫁が居ますからね、、、
「昔話はこれくらいにして、授業を進めますよ皆さん。内部干渉の要領はこの一ヶ月である程度の理解が出来たかと思います。物質強化は内部干渉を外部の物質で行います。私が見本を見せますのでよく見ていて下さい」
そう言うとセンリは腰にぶら下げた刀を抜くと手元の方から刀身が徐々に黒く染まっていった。
「この刀そのものを外部干渉により結合、自身の体と同じイメージで硬化の内部干渉を行えば肉体硬化と同様に物質の強度を上げることができます。干渉する物質が大きい程難しいのでまずはその辺の枝でやってみましょうか」
外部干渉という言葉を聞いて俺は嫌な予感を覚えながらも生い茂った樹木から枝を一本拝借する。
「では皆さんまずはその枝を自分の手足の延長だと思って下さい。あとはそのまま先程の授業通りに先端に炭素を集めるイメージで枝に集中して下さい」
先程の授業通り、とさらっと旧友に対する信頼の厚さを感じさせる物言いに、
ほんとに昔馴染みなんだな、俺とヴァンみたいなもんかなと考えていた。
すると、
「おや、アルエーリくん。筋がいいですね。あとミラさんとサージくんも良い傾向ですね」
褒められた。
そして良い兆候を発揮した面々から察するに、
あくまでも物質強化は内部干渉の応用的側面が強いのだろう。となるとあの暴力教師、案外ちゃんと生徒の特性を見抜いてたんだなぁ。
この時アルエーリは、慣れない賛辞に興奮したのか、自身の弊害である外部干渉による呼吸の乱れが無いことに気付いていなかった。
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