第4話 錬天術について②

俺は錬天術が得意じゃない――――

違う――

苦手?才能がない?いや、扱えないと言ったほうがいいかもしれない。




聞いたところによると、どうやら武術錬技なる大会が近々催されるらしい。学院での訓練が、どれくらい錬天術の技術を引き上げたかを生徒、教師ともに知る為のものである。となると、


「その武術錬技とやらを開催した結果、生徒の成績はおろか、教師の成績すらも丸裸になるってこと?」


シルヴァリウスはアルエーリの質問に対して感心半分呆れ半分に答える。

「よくその授業態度で成績が気になるような発言が出来るなアルエーリ。残念ながら成績云々は関係ない。さっきも言ったように外部干渉、内部干渉関係なくトーナメント戦をすることは、各々の得意不得意をあぶり出し、一年のうちから錬天術の底上げをする為の指標作りを主として開催されるんだ、わかったら普段の授業態度を改めろ」

それなんで総当たりじゃなくてトーナメントなの?と思ったが口に出すとまた怒られそうなので飲み込むことにした。


「でも先生、俺みたいなやつはそもそも外部干渉系の錬天術を使うことすら出来ないんですけど」


普通なら誰でも生活の一部として利用している外部干渉系の錬天術。

体内の炭素を軸に自然界の炭素と干渉し変形させるのが一般的なもので、実際動かしてるのは対象物の炭素原子なので術者への影響はない。はずなのだが、

俺が錬天術を使うとどういうわけか呼吸が出来なくなるんだ。理由は分からん。ただ内部干渉系の錬天術を使う分には問題なく使える辺りが、この異常を異常たらしめている。


「だから遅れてくるなと言ってるんだ。徹底的に内部干渉を鍛えることで外部干渉を必要としない錬天術士になれ。いいか、俺の授業とセンリの授業だけは何があろうと遅れてくるな」


何だろうな、面倒見がいいと言えば聞こえはいいんだけど、どこか真に迫るようなものも感じるこの違和感は。


「ところでアルエーリ、錬天術を使う時一瞬息を止めて使えば外部干渉も使えるんじゃないのか」

シルヴァリウスの質問は的を得ていた。


「使えますよ。ただ術の干渉が長いとその分息を止める時間も長くなるから、呼吸の乱れがそのまま術の乱れに繋がるんです」

だからこそ、扱えないのだ。


「そういうことか、原因が何にせよ武術錬技までそう長くもない。俺とセンリにバシバシしごかれるといい。」

教師にあるまじき悪い顔でニヤリと笑うシルヴァリウス。

日頃の鬱憤でも晴らすつもりか、免職になれ。

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