第3話 錬天術について①

「はぁっ!??許嫁!?この可愛い子が?お前の??」

まぁそりゃあ驚くなと言う方が無理だよなぁ。


「可愛いかどうかは知らんが一応、お互いの両親の合意の下に許嫁ってことになってる。というか本気で急がねぇとまずいから早く行くぞ」

「んーーー、後で説明しろよ!またね、ローゼさん」

二人はローゼを残し、足早に屋外へと向かい走り去っていった。




「お前等、入学してから俺の授業が何回目か分かるか?」

「六回目です、、」

「お前等が遅刻した回数を言ってみろ」

「五回です」

「潔くて結構、歯を食いしばれ」

遅刻した。

初回の授業案内を除き全て遅刻であれば潔くもなる。


ちょうどいま俺たちの頭上にある握りこぶしが

錬天術により硬化し、振り降ろされた。

「フンギッ!!!」

「あだぁっ!」

いっっっっってぇ暴力反対だぁ!!!


「と、これまでのおさらいを兼ねて見てもらったが、お前達が日常生活にも利用している錬天術には外部干渉と内部干渉がある」

「「あたまがぁぁぁっっ!!!」」

「アルエーリ、ヴァン。うるさいぞ授業中だ」

こぉんの暴力脳筋教師めぇぇぇ!!俺達を教材代わりに使いやがってぇっ!


「言うまでもなく外部干渉は、お前達の親御さんや街の人達が使っているようなものだ。

地面を隆起させて建物を建てたり、物体に干渉して変形させたりと用途は様々。

一方で今見せた肉体の硬質化が内部干渉だ。体内の炭素同士を結合させて一点に集めることで肉体の強度が増す。同時に体内にある有限の炭素を集めることで、当然脆い部分も生まれるから注意するように」


「シルヴァリウス先生、脆い部分を攻撃されたらどうなるんですか?」

物理的頭痛から立ち直ったアルエーリが問う。

「直に内臓を殴られてると思え」

「口から全部まろびでるわ!!」

一長一短も大概にしろ。


「だからこそ硬質化には同じく硬質化で威力を相殺するか、当たらないことが前提になる。硬質化せずに当たるとどうなるかは今身を持って知っただろう」

なるほど勉強になるなぁ、じゃなくて!


「もしくは体の表面を硬質化するという手段もある。卵の殻をイメージすると分かりやすいだろう。面積を拡げる分硬度は物足りないがな」


「それってそんな簡単に出来るものなんですか?」


「察しがいいなヴァン。というかお前にとってはそうだろう。いいか、この外部干渉と内部干渉にはそもそもの向き不向きがはっきりしている。これまでの授業の様子からしてお前は外部干渉向きだ。このクラスは特に外部干渉向きが多い。内部向きなのはアルエーリとミラ、サージくらいだろう。」

「へぇ」


「え、あたしですか」

「なんとなくそんな気がしてました」

アルエーリとヴァンがそれぞれ視線を向けると

青い髪が揺れる瞳の大きな女の子、ミラ・ミリシアと

緑色の髪に丸い眼鏡をかけた青年、サージ・ヴェットが正反対の反応を示す。


「来月に控えた武術錬技ではクラス、干渉の内外差関係なくトーナメントが組まれる。全員しっかり鍛えとかないと後々痛い目にあうから精進するように」


「はいっ!!」

俺を除くクラス全員の張りのある返事がした。

「武術錬技?」

居眠り、遅刻のフルコンボを決め続けたアルエーリだけは初耳だった。

ヴァンだけがからかうような表情でこちらを見ながらにやにやしている。


ヴァン、さてはお前また知ってて俺に何も言わなかったな?

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