第4話
夕焼けが綺麗だった。
教室の窓からは太陽の色が変わっていくのが見える。教室の明かりをつけるのが惜しくて、敢えてつけずに絵を描く。雰囲気に呑み込まれるように線をひいた。
教室の外にカラスがいた。こちらを見つめている。
「逃げないんだね。」
カラスに言葉が理解できるとは思っていないが話しかけてみる。カラスが鳴く。首を傾げる。
「動かないでね。」
私はカラスに体を向けてシャーペンを走らせる。近くで実物を見ながらスケッチなんて滅多にない。
カラスは私の言葉を理解したのかもしれない。動かずに静かにモデルになっていた。瞳が光を映し翡翠のような色やつ瑠璃色を一瞬ずつ現した。
「君はとても綺麗だね。」
私が少し笑うと、カラスが鳴いた。羽を動かした。
「カラスと話してるのか?」
後ろから声がした。
「そう。この子と話したくなったんだよ。」
彼は愉快そうに笑った。
「そっか…。君はなかなか独創的だね。」
「あなた、それ褒めてる?」
「褒めてるつもりだったんだけど。」
「そんな風には聞こえなかったんだけど?」
ごめんと彼が笑う。カラスが羽を広げた。
「バイバイ。」
カラスが鳴いて上昇して消えていった。
「充実してた?」
「まぁね。」
スケッチブックの上のカラスはこちらを見ていた。
指先の絆創膏が慣れなくて何処か違和感を感じていた。力を入れるとまだ痛みを感じられた。
そんな痛みが私の存在を私に証明させるものの1つだと思うとどこか可笑しく哀しい話のようにみえた。
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