第3話

教室に居る。


椅子に座り、擦り減ってきた鉛筆をティッシュをひいた机の上でカッターで研ぐ。鉛筆削りよりも加減ができてやりやすい気がした。淡々としてる作業は何も考える必要がないから好きだった。


「器用なもんだね。」


見上げると彼が居た。


「また突然現れたわね。」

「突然じゃない。」


彼は少しだけ不機嫌そうに見えた。


「驚かせて怪我させないように静かにしてただけ。」

「でも、現に怪我しちゃったんだけど…。」


左手の人差し指からは傷口から丸く血が溢れ出し始めていた。痛みも滲むようにじわりとなりだした。


「えっ、ごめん。」


絆創膏を探そうとするも、思ったより傷が深いようで動かそうとすると血が机に垂れそうになる。


「ねぇ、絆創膏持ってたりしない?」

「ん、ちょっと待って。」


彼はブレザーのポケットに手を入れて探し始めていた。自分も持っていないか片手でポケットをまさぐった。


「あったよ。」


絆創膏を個包装から取り出した。


「消毒した方がいいよな…。」

「確か各教室に消毒液あるよね。怪我用じゃないだろうけどさ。」

「まぁ、やらないよりはいいだろ。」


彼はティッシュに消毒液を含ませ、傷口に当てた。


「いっ…地味に染みるよね。」

「ほんとそれはごめん。」


ティッシュに血が移り始めていた。

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