第2話

放課後の教室にいる。他に誰もいない。


窓の外にカラスがとまり首を傾げた。そして黒いようで青く紫がかった羽を1枚落としどこかへ飛び去った。


何故か私はそれを拾いたくなって、教室を出て前方のドアを開いた。その羽はどこか暖かみがあり、生き物のものだったことを伝えるには充分だった。


羽を手に持ち教室へ戻る。


「カラスの羽は危なくないか?その、衛生的にも。」


また突然現れた。


「そうかもね。」


血管の浮いた手が羽を攫った。


「これ、綺麗だね。」

「さっきあなた、危ないって言ったじゃない。」


彼は口に手を当てて静かに笑った。


「そうだったね。」


羽を机に置いた。

私が椅子に座ると彼はその前の席に座ってこちらを向いた。


「羽、どうするの?」


何気なく拾ってしまったものに理由などない。返答に困る。私には時々衝動的に行動してしまう。まぁ、癖のようなものなんだろう。


「えっと…。特に考えてないというか…。」


我ながらまごついてしまうことに呆れてしまう。


「もし良かったら、それ、加工してあげるよ。」

「加工?」

「そ、消毒して、いい感じに身につけられるようにしてあげよっか?」

「えっと、迷惑じゃない?ほらだってただの羽だし。」

「そんな事ないよ。それにただの羽なんかじゃない。」


彼の目がこちらを見た。


「君が必要としたから拾った大事な羽だろ?」


彼の目は笑っていた。彼の右目には泣きぼくろがあった。


「そう、かも…。」


不思議な感じだ。掴みどころの無い語感。


「これが出来上がったら渡したいんだけど、また、話せるかな。」

「多分ね。」


彼は丁重に羽をリュックに入れた。


外ではカラスが8回鳴いて何処かに行った。

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