第4話

そして俺は出ていくための最後の荷物をトランクケースに収納をしていてドアがノックされた。

(なんの用事だろうな。荷造りしている最中に)

借りていたものは返したしなどと考えつつドアを開けた。

開いた先には屋敷でのお目付けのメイドが立っていた。

『どうしました?こんな早朝に』

『すみません。こんな朝早くに迷惑でしたでしょうか?』

『いえ大丈夫ですが、なんの用事でしょうか?』

『ええ、用事というのはお嬢様のことで。

部屋にこんなものが…』

『これは?』

(見たところ普通の写真や物のように見えるけど…)

『これは最近お嬢様の部屋に置かれたものなんです。多分向こうの婿様に貰ったものだと思えますが、よく見ると変なんです。』

そして俺は指が刺された写真の先を見て見ると確かに違和感があった。

(確かに変だな、お嬢様はいつもは外出する際にフリフリのスカートやら上着とか着て行くのにこの写真にはデニムのスカートを履いている…)

『確かに変だけど、これはスポーツとかするために着てるんじゃないのか?

ほらここに写ってるのって婿様の姿だし服装もスポーツするための服っぽいし。』

写真を見る限り暁の服装は七分袖のズボンに半袖のスポーツシャツに上着着ているだけの服装に見える。

『でもでも、この写真の方に移る婿様はなんか様子が変なんですよ。ほら』

もう一つの方の写真を見せてもらった。

(確かに変だな。心の底から楽しんでいないように見える。)

『最近カラーギャングも噂になっていますし、お嬢様も最近婿様と一緒に出かけている日に限って遅いですし』

『そうなんですか、って言っても俺はもう軍人ではないので脱退しろと言われた身なので力になれなくてすみません。』

『いえ、すみませんでした。こんな早朝に。

一番身近で仲が良かったですからお嬢様と

相談するならこのひとってきめていましたから。』

『そうなんですか、とりあえずまだ今日中はいるので何かありましたらお願いしますり』

『はい、そのときは頼みます。』

そして彼女は俺の部屋に写真を置いていった。

写真に写っている彼女はとても可愛い笑顔なのだが、どこか悲しげな雰囲気を醸し出していたように思えた。

(カラーギャングか…。嫌な予感が当たらなければいいのだが。)

そしてその日は何もなくそのまま俺は荷造りを終え友達との最後の食事を済ませていた。

そして食事を終えた後風呂に入ろうとして脱衣所に気の抜けたまま入ったらそこには

誰かが立っていた。

(ってやば、誰かいたんか。)

『すみません!!』

俺はドアを思い切り締め何度も謝った。

相手が誰かも知らずに思い切り締めてしまったけど、多分同性だったはず。

『誰だ?』

『あ、いや、本当にすみません。 いるとは知らずに。元お嬢様の側近の久遠です。』

『何だ、久遠か。』

『はい、その声は総督ですか?』

『ああ、そうだ。何だ風呂入るとこだったのだが、一緒に入るか?』

『い、いえ、俺なんかが一緒に入るなんて無礼だと思います。』

『大丈夫だ、そういえば、脱退の理由を言ってなかったな。風呂入りながら喋るか。入ってこい。』

『は、はい。それでは失礼致します。』

そして俺は服を脱ぎ総督が入っている風呂へと一緒に入ったのである。

『それで、俺が脱退させられた理由というのは?』

『ああ、それはな向こうの婿様に言われて否応無しにな。すまないな。』

『いえ、大丈夫です。』

『それと言っては次の仕事とか見つかったのか?なんならこちらでも用意できるが。』

『いえ、とりあえずは自分で探して見ます。』

『そうか、なら応援してるぞ。たまには遊びに来てくれよな。娘も喜ぶ。』

『ええ。』

そして俺と総督はお嬢様の幼女期の頃やら入隊仕立ての頃の話に花を咲かせていたのであった。

(ふー、最後の湯だったけどよかったな。

あんなにも総督と話せて。遊びに来てくれか…行けるといいな。)などと思っていたら部屋についてしまった。

部屋に入るとそこにはお嬢様が座っていた。

『な、なんでこんな所にいるんですか?』

俺は動揺を隠せなかった。

『ごめんなさい。部屋に無断で入ったのは謝るわ。でも話があるの。』

『別に部屋に入るぐらいは何度もありましたから大丈夫ですけど。話というのは?』

『ええ、この前話した結婚が嫌と言うのですわ。』

(ああ、あの事か。)

『それでらどうなったんですか?』

『一応言えたのは言えたのですが、それ以降そう言うことに関しては取り合ってくれなくて。』

『そうですか。俺が助言をしたせいで。』

『いえ、久遠は悪くありません。明日にはもう出ていかれるのですか?』

『そうですね。明日の朝にはもう出て行くつもりです。見送りは必要ありません。』

『そうですか、ならこれだけでも貰ってくださいな。』

そして渡されたのは部屋の前にいた時に持っていた包み紙だった。

『これは?』

『それはこの前直したネックレスです。』

『え、でもあれって大事なものでは?』

『ええ、でも父が『お前に大切な人ができたら渡してもいいと思う。』ってこの前言っていたので。久遠にと。』

『すみませんが俺はそれを受け取る資格もありません。もう側近ではないので。上げるのであれば婿殿へ。』

『そうですか。それは残念です。用事は以上ですので。おやすみなさい、久遠』

『おやすみなさい。お嬢様。』

そしてお嬢様は自室へと戻り俺はその後明日の予定を決めて就寝した。

翌日の朝俺は荷物を持ち総督へと最後の挨拶をして旅立つのであった。

(さて、どうするものか。)

俺は当てもなくさもよった。とりあえずは総督が用意してくれた家へと足を運んだ。

(これか。総督が言ってたのって)

見た目はちょっとボロいが中は意外と綺麗だった。一人暮らしするにはちょうどいいサイズだった。

とりあえず俺は荷物を降ろし掃除を適当にして友人たちに連絡をした。

『もしもし、久遠だけど。』

『おお、久遠かー。家には着いたか?』

『ああ、着いたよ。結構いい家だ。』

『そうか、なら今度遊びに行かせろよ。』

『ああ、来いよ。お茶でも出してやるよ。』

そして1週間足らずで友人たちは尋ねて来たりと良いバイト先や仕事先を紹介して貰ったりした。

『ありがとな。脱退した身で。』

『良いってことよ。俺たちは友人だしな。』

『とりあえずは次の仕事は決まったんだろ?』

『ああ、今は色々と手を出してるとこかな。』

そう、あれから色々と手を出していたのだ。

飲食店のバイト、喫茶店や警備職やら。

そしてそれらの仕事に慣れて来た頃

一通のメールが届いた。

(何のメールだ。またあいつらか?)

そのメールを開いてみると、驚きを隠せなかった。

その直後電話がかかって来た。

『おい!。あのメール見たか?こっちでも騒ぎになってる。』

『ああ、今確認してるとこだ、で内容は?』

内容はこうだったらしい、

『お前らの大切なお嬢様を返して欲しければこいつの父親と元側近の久遠というやつを寄越しな。場所はここだ。カラーギャングより。』というメール文と共にお嬢様の眠らされている姿が映し出されていた。


『…っざっけんじゃねえぞ。おい!

聞いてるか?今総督はどうしてる?』

『ああ、今総督はお嬢様を助け出すために準備をしている。』

そしてまたメール音がなった。

そこに映し出されていたのは、傷だらけのお嬢様と相手側の婿だった。

『とりあえず、俺もそっちへ行くから総督にはまだ動くなと言っておいてくれ。』

『ああ、そう言っとく。』

そして電話が切れ、俺は荷物の中にあった私物の銃やら何やらを持ってまた、軍の方へと戻った。

(クソが、ふざけてるじゃねえぞ。カラーギャングどもが。最近噂になってるって言ってたがここまでするのか?)

そして軍へと戻った俺は総督に会いに行った。

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