見ないふり。知らんぷり。
きれいな花が咲いていた。
おいしいケーキを食べた。
席替えで窓際の真ん中の席になれた。
当てられた問題をきちんと解けた。
実験がうまくいった。
行きの電車で座れた。
夕飯が好きなメニューだった。
ことばにするとありきたりで,時間と比べるとあまりにも小さくて一瞬で過ぎてしまうもの。
それがとてもとてもお気に入りなの。
そんなものを手放したくないのは当然のことでしょう?
手のひらにのる小さくてかわいいお気に入りたちを,ポケットも容量も少ない心のポシェットにやさしくそっと詰め込む。ポシェットが閉まらないくらいたくさんたくさん詰め込むの。たくさんあった方がいいに決まっているのだから。
そんなポシェットを提げながら,くるくるところころと前がはっきり見えない道を進む。両手でポシェットの紐を握っているのは,お気に入りたちを落とさないため。見失わないため。
後ろも下も見ないの。前だけを見て進む。どんなに霧がかかっていても,その先を見つめる。
だって,気づかなければいいのだもの。見てなければ,知らなければ,いいことなの。
深くて青い液体はわたしにはいらないから。
いつもぱんぱんのポシェットに入らないでしょ?
夢物語。あるいは空想。 Siren @GISELLE-siren
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。夢物語。あるいは空想。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます